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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介2024 Vol.1阿久澤麻理子著 『差別する人の研究 : 変容する部落差別と現代のレイシズム』 旬報社 2023年「自分は差別しないから関係ない」「自分の周りに差別はない」と思っていないでしょうか?かつてのあからさまな差別とは異なり、「新しいレイシズム」では、制度や組織慣行などの社会システムに偏見が埋め込まれている「制度的レイシズム」に警鐘を鳴らしています。文化的差異を理由に差別扱いや否定的感情を正当化する「文化的レイシズム」や「私は人種なんて関係ないし気にしていない」と言いつつ、マジョリティに優位な社会状況を無批判に維持してしまう「カラーブラインド・レイシズム」。あてはまるものが一つもない人がいるでしょうか?だからと言って、「あなたはマジョリティだ、マジョリティ特権に気づけ」と言われても、なかなか受け容れられないでしょう。むしろ「自分が持つべき権利をマイノリティに奪われた」と考えるかもしれません。本来人権はすべての人の権利なのに「マイノリティ特権」としてゼロサムゲームにする問題性を、著者は差別される側ではなく、「差別する側」にあると断じます。そこから見えてくる世界は?それを理解したうえで次にどうすればよい?人権を学ぶ法学部生にぜひ読んだ貰いたい1冊です。 里中高志著 『触法精神障害者 : 医療観察法をめぐって』 中央公論新社 2023年重大事件が起きたときに、「責任能力がないので無罪」というのをニュースなどで目にしたり聞いたりしたことがある人は多いのではないでしょうか。例えば、人を殺したのだけれども、精神障害を患っており、裁判で無罪になったというようなニュースです。「人を殺してるのに無罪とは何ごとだ!」と怒る人もたくさんいるかと思います。しかし、我々は精神障害について、どれだけ知っているのでしょうか?罹患するとどんな症状が現れるのでしょうか?裁判で無罪となった場合は、その後どうなるのでしょうか? 林香里, 田中東子編 『ジェンダーで学ぶメディア論 = Media studies from gender perspective』 世界思想社 2023年ジェンダーは、いまやどのような学問的分野においても欠くことのできない重要な視座となっています。「周縁」に追い込まれた弱い立場の人々は、「中心」にいては決して見えない問題を見出し、新たな光を当てることができるからです。それは、ジェンダーに限らず、セクシャリティや人種などあらゆることについても言えるでしょう。 河口洋行著 『文系のための統計学入門 : データサイエンスの基礎』 日本評論社 2021年私たちは膨大なデータの中で暮らしています。情報化社会の進展とイノベーションによって、私たちはかつてない量のデータにアクセス可能となり、同時にその処理と分析が求められています。しかし、その中にはフェイクニュースなど信頼できない情報も溢れていて、その真偽を正しく判断できることは、これからの社会を生き抜くための最も大切なリテラシーと言えるでしょう。統計学とデータサイエンスは、この膨大な情報を読み解き、活用するための必須ツールであり、文系・理系に関係なく、これから未来を生きていく学生の皆さんが学ばなければならないものです。 野矢茂樹著 『哲学な日々 : 考えさせない時代に抗して』 講談社 2015年自分や周りの人たち、人が生きる自然や社会、文化や時代、国や世界のこと……、そのあり方はどうなっていて、どうあるべきなのか。それは、人がこの世をうまく生きていくうえでぜひとも考えなくてはいけないはずの問いなのでしょう。なのに、いやだからこそ、ひとたびその問いに向き合い、腰を据えて考えようとすると、どうにも途方に暮れてしまう。どう問い、どう考えたらいいのかわからなくなってしまうのかもしれません。 |