推薦図書
『想い出すこと:ヴィクトリア時代と女性の自立』
- 著者名 : メアリー・ペイリー・マーシャル著;松山直樹訳
- 出版社 : 晃洋書房
- 出版年 : 2021年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2024 Vol.3
本書は,女性の社会進出が一般的ではなかった19世紀後半,ケンブリッジ大学で女性として初めて経済学を学び,イギリスで最初の女性経済学講師となったメアリー・ペイリー・マーシャル(1850-1944)の回顧録です。
メアリーは,教区牧師であったトマス・ペイリーを父に,18世紀ケンブリッジ大学を代表する神学者ウィリアム・ペイリーを曽祖父にもつ「厳格な福音主義の家庭に生まれ育った」女性でした。このような家庭環境の影響もあり,従来,メアリーは,夫であったケンブリッジ大学の経済学教授アルフレッド・マーシャル(1842-1924)を献身的に支え,自らの人生を費やしたと理解されてきました。しかし,本書を読むとそのような理解とは異なる彼女の姿が窺えるはずです。それは,偉大な経済学者「夫人」として夫を支えるというよりも,「相互補完的なパートナーシップ」を築き,それぞれが自律的に研究・教育を展開していたことが本書の記述から読み取れるからです。男女の性的役割分業の意義が問われている昨今,本書からヴィクトリア時代を生きたメアリーの生き様を垣間見て,現代社会における女性の自立に関わる問題を考える機会にして欲しいです。
(生垣琴絵専任講師/3F西開架 289.3||Ma 52) ※赤字をクリックでOPACにつながります
メアリーは,教区牧師であったトマス・ペイリーを父に,18世紀ケンブリッジ大学を代表する神学者ウィリアム・ペイリーを曽祖父にもつ「厳格な福音主義の家庭に生まれ育った」女性でした。このような家庭環境の影響もあり,従来,メアリーは,夫であったケンブリッジ大学の経済学教授アルフレッド・マーシャル(1842-1924)を献身的に支え,自らの人生を費やしたと理解されてきました。しかし,本書を読むとそのような理解とは異なる彼女の姿が窺えるはずです。それは,偉大な経済学者「夫人」として夫を支えるというよりも,「相互補完的なパートナーシップ」を築き,それぞれが自律的に研究・教育を展開していたことが本書の記述から読み取れるからです。男女の性的役割分業の意義が問われている昨今,本書からヴィクトリア時代を生きたメアリーの生き様を垣間見て,現代社会における女性の自立に関わる問題を考える機会にして欲しいです。
(生垣琴絵専任講師/3F西開架 289.3||Ma 52) ※赤字をクリックでOPACにつながります