推薦図書

『民主主義の経済理論』

  • 著者名 : アンソニー・ダウンズ著;古田精司監訳
  • 出版社 : 成文堂
  • 出版年 : 1980年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2024 Vol.3
経済のアプローチと政治のそれとは似通っている部分があります。経済学では市場における生産者・企業と消費者の関係をしばしば扱いますが,これは政治において,政党や政治家が提供しようとする政策を有権者が選択する行為と原理的には同じです。この点に着目し,政治現象を経済学的な視点で説明しようとしたのがA.ダウンズです。
 ダウンズ以前の伝統的な政治学においては,仮説に基づいて調査を行い,その結果から理論を導こうとする帰納的な分析方法が一般的でした。これに対し,ダウンズはアクターを合理的な存在,すなわち自己の利益や満足感の最大化を求めて行動する存在として捉え,そこから演繹的に政治現象を分析しようとしました。
 彼は利益を最大化しようとする企業の合理的な行動と,選挙に際し得票を最大化しようとする政党のそれとを同じ分析視角で捉え,政党制や政党の政策変更,新党参入といった政治現象を説明しようと試みました。その分析は政治学において極めて大きな役割を果たしたと評価されています。『民主主義の経済理論』は経済学の発想を政治現象の分析に用いた古典名著ともいえる書物ですので,ぜひ一度同書を手に取っていただきたいと思います。
(水戸克典教授/4F東開架 317||D 89)     ※赤字をクリックでOPACにつながります