推薦図書

『権威主義:独裁政治の歴史と変貌』

  • 著者名 : エリカ・フランツ著 ; 上谷直克,今井宏平,中井遼訳
  • 出版社 : 白水社
  • 出版年 : 2021年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2025 Vol.2
三度の「民主化の波」を経験することで,世界に民主主義が広がっていくかのように思われました。しかしながら,昨今の世界各国の政治状況はいかがでしょうか。著者のエリカ・フランツは,「政府が自由で公正な選挙で選ばれ(ない)」体制,すなわち権威主義体制が数多く見られるようになってきたと指摘しています。本書では,こうした権威主義体制への変動やその逆のパターンが示されると同時に,時代や地域ごとに異なる権威主義体制の特徴が描き出されています。
 ある日突然,権威主義体制へ移行するというケースは稀になってきている一方,長い時間をかけて少しずつ変化が生じるようになってきています。例えば,司法への介入,ジャーナリズムへの弾圧,選挙規定の操作,憲法改正などによる権限の拡大や反対派への抑圧などは,どれも権威主義体制への移行の兆しであると言われています。われわれは,こうした緩慢な変化に自覚的であることが重要です。一つ一つの変化が何をもたらすのか注視しながら能動的に政治に参加していくことが求められます。

(三澤真明准教授/4F東開架 311.8||F 44)       ※赤字をクリックでOPACにつながります