推薦図書
『空爆論 : メディアと戦争』
- 著者名 : 吉見俊哉 著
- 出版社 : 岩波書店
- 出版年 : 2022年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2024 Vol.2
本書は,第1次世界大戦以降に現れた「空爆」に焦点を当てています。それは上空から人々を俯瞰し,支配し,殺害する「眼差し」であると著者は強調します。近代以前,戦争の主役は戦場で戦う兵士でしたが,近代戦争ではメディア技術がその役割を担うようになりました。高高度から正確に爆弾を投下することによって実現する空爆は,まさに「眼差しのテクノロジー」による攻撃なのです。
例えば,第2次世界大戦中,アメリカは戦略爆撃機B29で日本を空爆しました。高度1万メートルからの爆撃に対し,日本の戦闘機による迎撃は実質的に不可能でした。1945年3月の東京空襲では,わずか2時間で約10万人が死亡し,約100万人が罹災しました。この結果は,テクノロジーの差が生む「非対称性」を象徴しています。それは敵国に壊滅的な被害を与える手段であると同時に,自国の兵士を安全に戦わせる手段でもあるのです。この非対称性を,私たちはどのように評価すべきなのでしょうか。
現在でも,ウクライナやパレスチナではドローンなどの新たな「眼差しのテクノロジー」が多くの死をもたらしています。本書は,テクノロジーの発達が引き起こす非対称的な戦争の道義性について考える機会を提供しています。
(中正樹教授/5F東開架 391.207||Y 91) ※赤字をクリックでOPACにつながります
例えば,第2次世界大戦中,アメリカは戦略爆撃機B29で日本を空爆しました。高度1万メートルからの爆撃に対し,日本の戦闘機による迎撃は実質的に不可能でした。1945年3月の東京空襲では,わずか2時間で約10万人が死亡し,約100万人が罹災しました。この結果は,テクノロジーの差が生む「非対称性」を象徴しています。それは敵国に壊滅的な被害を与える手段であると同時に,自国の兵士を安全に戦わせる手段でもあるのです。この非対称性を,私たちはどのように評価すべきなのでしょうか。
現在でも,ウクライナやパレスチナではドローンなどの新たな「眼差しのテクノロジー」が多くの死をもたらしています。本書は,テクノロジーの発達が引き起こす非対称的な戦争の道義性について考える機会を提供しています。
(中正樹教授/5F東開架 391.207||Y 91) ※赤字をクリックでOPACにつながります