推薦図書

『国際法以後』

  • 著者名 : 最上敏樹 著
  • 出版社 : みすず書房
  • 出版年 : 2024年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2024 Vol.2
近年,国際社会の秩序を大きく揺るがす様々な紛争が繰り返されています。ロシアによるウクライナ侵攻,イスラエル・ガザ戦争など,ニュースやSNS等で目にする機会も多いでしょう。このような不安定化した国際情勢において,国際法は明白に破られ,その存在意義が問われる状況ともなっています。
本書は,国際法の実効性の脆弱さ,そして無力さに,正面から向き合う書です。最上教授は,国際法を「奇妙な法」と呼び,国際法学の内部でその批判的検討について整理しています。
全体を通して浮かび上がるのは,既存の国際法の「その後」に来るべきものは果たしていかなるものなのか,という問いかけです。しばしば実効性がないと指摘される国際法の構造的問題に向き合い,その再構築について思索を進めています。著者の言葉を借りれば,この本の試みは,「これまでの国際法とは異なる国際法の展望を開く」ためのもので,実際に今後の国際法のありかたに大きな影響を与える一冊でしょう。
この本は,研究者のみならず一般の方向けにも書かれています。難解な部分もあるでしょうが,国際法や現下の国際情勢に関心のある学生,教職員にはぜひ手に取ってもらいたい一冊です。
(本吉祐樹准教授/1F新着図書コーナー 329||Mo 16a) ※赤字をクリックでOPACにつながります