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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介図書委員からの推薦図書 2013 Vol.1宇野重規著 『政治哲学へ:現代フランスとの対話』東京大学出版会 2004これまでのフランス的政治思想の対立は,「保守主義」対「社会主義」の枠組みが一般的とされてきた。しかし冷戦終結の頃からフランス政治思想研究の中に,アングロサクソン的リベラリズム研究が市民権を得つつある。と言ってこれまでもフランス思想界に「リベラリズム(自由主義)」の潮流がなかったわけではない。がしかし,フランス的文脈での理解のされかたでは,リベラリズムは「保守主義」を表象されるものと解され,それに対抗するものこそが「社会主義」であった。これがアメリカ的文脈でならば,「リベラリズム」は民主党(革新)の依拠する政治哲学であり,共和党の方は「保守主義」とされ,それぞれの思想の位相がフランスとアングロサクソンとの間で微妙な異なりを見せてきた。 こうしたフランスでの伝統的思想解釈に棹さすかのように,いま大きな潮流としてリベラリズムの再検討が始まっているのである。本書は多くの現代フランス政治学者たちの書を紐解きながら,「人権と市民権」,「共和主義と自由主義」などを平易に解説しながら,現代フランス政治哲学の位置づけを検討する好著である。是非ご一読を!! 『Journalism & Mass Communication Quarterly』 Association for Education in Journalism and Mass Communication季刊『JMCクォータリー』は,米国でもっともジャーナリズム研究・教育の領域で専門性の高い雑誌のひとつである。発行元は,米国ジャーナリズム&マス・コミュニケーション教育学会である。この学会はこの領域において,世界でも最大規模の専門学術団体で,その主な構成員は,大学教員,現場のジャーナリストや編集者,ジャーナリストを志す学生たち,およそ3000人である。8月の年次総会では数日間にわたり100を超えるセッションが開催され,国際的な人的交流の場ともなっている。この学会の会員に無料で配布される専門誌が『JMCクォータリー』である。季刊ごとの特集と,投稿論文,および,多くの書評からなっている。最新号(2012年冬号)の特集は「イデオロギーとフレーミング」である。民族紛争の続く世界の混迷のなかで,ニュースフレーミングの問題は人びとの社会認知を左右する重大な問題であることから,専門研究の先端が特集されている。書評は24冊を数え,ジャーナリズム研究の傾向も見えてくる作りになっている。学会誌はさらに専門化した『J&MC Monographs』『J&MC Educator』『Newspaper Research Journal』『Journal of Mass Media Ethics』他多数が,分科会メンバー向けに発刊されている。 ノーマン・M・ネイマーク著 根岸隆夫訳 『スターリンのジェノサイド』 みすず書房 2011ジェノサイド(genocide)とは,1948年の「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」によると,「国民的,民族的,人種的または宗教的な集団の全部または一部を集団それ自体として破壊する意図をもって行われる」行為をいう。本書は,ソ連崩壊後に公開された公文書をもとに,スターリンが1930年代初期から行った自国民の処刑,強制移住などがジェノサイドにあたるかを検証する。 スターリンは富農の処刑と極寒地への強制移住,ウクライナ農民から穀物を強制徴発したことによる大飢饉,国境地域の敵性民族の逮捕・処刑,強制移住,政敵の粛清などに中心的役割を果たした。その結果,1953年までに110~120万人が処刑され,600万人が強制移住させられ,300~500万人が餓死または農業集団化や強制移住に反対して処刑された。本書は,こうしたスターリンの命令,許可,黙認による特定の社会集団・政治集団の計画的大量抹殺もジェノサイドに含めるべきだと主張する。 人は他者の死や苦しみにどこまで無関心になれるのか。一次資料と先行研究を駆使して書かれた本書は,全体主義の恐怖をあぶり出している。学生諸君の一読をすすめたい。 |