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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介図書委員からの推薦図書 2013 Vol.5John Baker著 『Collected papers on English legal history』 Cambridge Univ. 2013ジョン・ベイカー教授(Sir John Hamilton Baker, 1944-)の名前を 初めて知ったのは学生時代に出た小山貞夫教授の手になる名訳『イングランド法制史概説』(創文社・1975年)によってである。原著は,1971年に出版されたAn Introduction to English Law (London Butterworths 1971)であり,刊行当時著者がまだ27歳という若さであったことは大きな驚きであった。教授はロンドン大学ユニヴァーシティ・コレッジの出身で,1971年以来ケンブリッジ大学で教鞭をとられ,イングランド法制史講座教授(1988~1993年)を経て,2011年までダウニング講座教授を務められた。標記論文集3巻には,40年にわたる膨大な仕事の中から精選された84の論稿が収録されており,その構成を略記すると以下の通りである。 ピエール・ブルデュー著 立花英裕訳 『国家貴族Ⅰ,Ⅱ-エリート教育と支配階級の再生産―』 藤原書店 2012フランスが生んだ社会学者で,2002年に惜しくも他界したピエール・ブルデューによる本書は,彼の理論である「文化資本」概念を駆使し,国家におけるエリートつまり国家貴族の様相を具体的に導き出した労作である。 豊富なデータに裏付けされた彼の理論は,最終的に権力や学校といった存在の内実にまで踏み込み,フランスでの官僚輩出の牙城である,つまり究極の学歴である国立行政学院を頂点とする国家貴族の「再生産」(この概念もブルデューの定立したもの)が徹底していく様を描き出す。その背景には,彼の反骨精神が横溢としており,それゆえ国家は何か?それを支える貴族とは何か?といった問いへの答えが繰り返し語られるのである。 このブルデュー理論を日本に当てはめての研究も出てきてはいるようである。しかしながら,まだその咀嚼が充分とは言えない。学歴や官僚といった古くて新しい呪縛からいまだ解放されていないがゆえに,3・11の悲劇も起こったことは衆目も認めるところであろう。日本がいまだに解放されない呪縛から,いかに身を解き放ち,新たな社会像を描き出すか,その大きなヒントが本書に隠されていると言えよう。これからの人たちに向けて大きなメッセージの含まれた本書は,一読に値する。 御厨 貴編 『園部逸夫オーラル・ヒストリー:タテ社会をヨコに生きて』 法律文化社 2013本書は,学者から裁判官に転身し,一度学者に戻りながら,ついには最高裁判事を10年間務められた園部逸夫先生が,その職を退かれた直後に,インタビュアーとの対話の中でそれまでの自身のキャリアーについて語ったものをまとめた,いわば個人史である。裁判官の業務や先生自身が関わった事件について語ったものが中心であるが,法的知識が充分でなくても理解でき,一般にはほとんど知られていない裁判官の職務や生活について知ることができるので,一読することを勧めたい。 私は一度,園部先生と近しくお話をさせて戴いた経験がある。非常に温厚で,リベラルな考え方の持ち主であり,本書もそうした先生の人柄がよく顕れている。 しかし,それだけではなく,例えば戦後,日本は戦前の終審裁判所である大審院を廃止し,アメリカの最高裁判所に倣って最高裁判所を設けたが,その元になっているアメリカで言う行政委員会,イギリスで言えば行政審判所を確立しないまま司法審査制度を取り入れたため,日本ではジャッジ・メイド・ローの考え方が欠如していることなど,日本の司法制度が抱える問題点についての鋭い指摘が所々にあり,法律を学習する際に参考になることが少なくないであろう。 |