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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介2022 Vol.5今村哲也著『地理的表示保護制度の生成と展開』弘文堂 2022年シャンパン、球磨(くま)焼酎に夕張メロン、カマンベールチーズ…講義で「空腹だったらごめんなさいね」と言いつつ言及するこれらの表示は、その土地その人間集団でこそ生み出せる特性を持つ産品について生産者団体等が省庁に登録する、「地理的表示」(geographical indications: GI)という知的財産権です。欧州の発祥で、近時締結された日・EU経済連携協定ではお互いの登録GIを相互に保護しあうと約束する等、保護が進んでいますが、その確立は1990年代後半以降と、比較的最近です。その過程には、農業を含む一次産業を支援し、輸出産業化する上で知的財産権の保護制度を活用する各国・地域の様々なアプローチが交錯してきました。日本のGI研究に先鞭をつけた研究者が博士論文を大幅改稿した本書は、GIについて、現在もなお議論が続くその正当化根拠から、活用戦略の異なりに応じた各国・地域の多様な保護制度及び国際的な枠組みとそれらの相互関係、さらに近時のFTA・EPAにおける扱いまでを包括的に論じています。世界を俯瞰する視点を得て身近な商品を見る面白さを感じられることでしょう。 エドウィン・ブラック著 ; 西川美樹訳『弱者に仕掛けた戦争 : アメリカ優生学運動の歴史』人文書院 2022年本書の著者エドウィン・ブラックは、数多くの受賞歴をもつ国際的なジャーナリストで『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー作家です。アメリカ、ヨーロッパ、イスラエルの主要な新聞雑誌でも、人権、ジェノサイド、企業犯罪、政府の不正行為、エネルギー問題などのテーマを中心に多くの記事を書いています。その功績はピュリッツァー賞に何度もノミネートされ、本書『War Against the Weak(弱者に仕掛けた戦争)』をもとにした同名のドキュメンタリー映画も制作されました。 磯村保著『事例でおさえる民法改正債権法』有斐閣 2021年大学における民法の授業では、民法の条文と判例・学説を通した民事紛争の解決ルールをまず理解することが中心とされます。もっとも、こうした抽象的な紛争解決ルールも、具体的事例の中で適用し、運用してみて初めて、その意味を実感できるものです。また、これを通じて、(現段階での)多数説的解決ルールが抱える問題点に気づかされることも少なくありません。思考を深めるうえで、抽象と具体を往復することは極めて重要です。 |