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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介2023 Vol.4泉房穂著 ; 鮫島浩聞き手『政治はケンカだ! : 明石市長の12年』講談社 2023年明石市はどこにあるかご存知ですか?報道等で前市長がどのようなパワハラ暴言を発したのかよく知られている市です。一方で、彼が市長だった頃、一部の市民から、特に若いお母さん世代から少子化対策に対する政策評価が高く、実際に出生率が増加していたことも事実です。私はこのギャップに興味をもち、どのような人物なのか知りたくて彼の著作を数冊読んでみました。 小賀野晶一, 浦木厚利, 松嶋隆弘編著『一般条項の理論・実務・判例』第1巻 基礎編、第2巻 応用編(勁草法律実務シリーズ)勁草書房 2023年民法を学ぶと、法律学の基本的な考え方を身に付けることができます。その一つに信義則、権利濫用、公序良俗等の一般条項があります。法律学の初期に学ぶ理論ですから、一般条項を理解した上で、他の条文を学んでゆくことになります。 ところが、それを具体的な事件に当てはめて適用された裁判例を検討しようとすると、一般条項は訴訟手続上どのように主張・立証して行くべきかが問題となります。本書は、研究者による判例分析、弁護士による主張・立証の方法、裁判官による裁判所からみた立証のポイント、の3つの視点から分類し、多面的に考察しています。 一例を挙げれば、信義則・権利濫用の生成と展開、子の引渡請求権と民事執行法改正、環境問題と信託法理、要件事実が訴訟手続において果たすべき役割、表見代理における「正当な理由」等、講義で取り上げられる有名な事件の解説があり、それに理論的な分析もされています。一般条項を深く学ぶことで、講義やゼミの検討を深めることができます。 基礎編と応用編の2巻本ですから、さまざまな一般条項が取り上げられています。この中から興味のある条項の解説を順次読み進めていってください。 高橋眞著『損害概念論序説』有斐閣 2005年民法、中でも債権法を学んだ皆さんは、「債務不履行(契約違反)による損害賠償」と言えば、これが基本的には「履行利益賠償」を意味することを知っているでしょう。本旨履行がなされたならば現在あったであろう財産状態を金銭的に実現する。もっとも、この履行利益賠償とは別に、「信頼利益賠償」という言葉を聞いた学生も少なくないと思います。民法総則でいえば、錯誤取消しによって契約が無効になる場合、債権法でいえば、いわゆる契約締結上の過失事例においてよく登場します。このように信頼利益賠償は、伝統的に、契約が不成立・無効なケースで問題とされる概念であり、履行利益賠償/信頼利益賠償は、契約の有効/無効と結びつけて論じられてきました。 しかし、近年日本でも、債務不履行による損害賠償として、無駄になった費用の賠償(=原状回復的損害賠償)を認めようとする議論が有力です。その嚆矢が、今回紹介する髙橋眞教授による一連の研究になります。履行利益(積極的契約利益)と信頼利益(消極的契約利益)とは、賠償によって回復されるべき状態の方向(因果関係の終点)を決定するための技術概念であることが示されました。履行利益賠償を理解するうえでも、本研究の理解は非常に重要だと思います。 チョン・アウン著 ; 生田美保訳『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら : 15冊から読み解く家事労働と資本主義の過去・現在・未来』DU BOOKS 2023年本書は,共働き世帯の急増やそれに伴う少子化など,日本と同様の社会問題を抱える隣国,韓国を舞台として,「主婦」が,「古典」とされる著作を読み解きながら,自身を取り巻く資本主義社会について理解していくというストーリーになっています。本書で紹介される15冊の「古典」のなかには,書名にあるマルクスに限らず,社会科学において重要な著作も含まれています。 本書において主題となるのは,「主婦」と呼ばれる人たちは,家でさまざまな労働(家事労働)をこなしているにもかかわらず,なぜ,「家で遊んでいる」と言われてしまうのか,そして,そのような言葉が発せられるに至った社会的・文化的背景を掘り下げることにあります。筆者は,それを明らかにすることは,当事者である主婦や母親たちだけでなく,父親たち,母親ではない主婦たち,母親でも主婦でもない非婚女性たちにとっても必要なことだと言います。韓国のみならず日本の社会においても,家事労働を軽視する風潮があった過去は否定できません。あらゆる人が生きていくにあたり家事労働は不可欠であるにも関わらず,なぜそれを一手に引き受ける主婦が「遊んでいる」と言われなければならないのでしょう。筆者の言う通り,これは,「私たち全員」が考えるべき問題なのです。学生の皆さんにも,本書を手にとって,自分なりの視点でこの問題について考えてほしいです。 大石眞, 大山礼子編著 ; 山本龍彦 [ほか] 執筆『国会を考える』三省堂 2017年民主主義の危機が指摘されるようになって随分と経ちますが、改めて指摘するまでもなく、その最も大きな要因の一つが議会機能の衰退です。現在、どこの先進国でもこの問題に直面していますが、とりわけ日本の国会についてはその形骸化が著しいといわれています。これまで多くの論者によって、国会の会期や委員会といったフォーマルな制度の問題点が議論されてきました。同時に、国会対策委員会や与党事前審査をはじめとしたインフォーマルな点にも焦点が当てられ、その改革案がいくつも提起されています。 |