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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介2023 Vol.1伊藤亜紗著『目の見えない人は世界をどう見ているのか』光文社 2015年「フツウの人」基準の法。当然なようだけど、「フツウの人」とは?多数派はフツウ?多数決が数の多寡を示すだけで、多数が正しい訳ではないように、マジョリティが正しく、マイノリティが間違っているわけではないでしょう。では法は?法はマジョリティ規範の当然視に胡坐をかいていないでしょうか? 井田良著『死刑制度と刑罰理論 : 死刑はなぜ問題なのか』岩波書店 2022年「死刑存廃論は価値観の対立でしかないのか?そこに“理論”がはたしてあるのか?」一定の主義主張(価値観)を前提にそこから動くことなく、相手方に批判を加え合っているかのような、かみ合わない議論状況を目にしたときに、そのような感想を抱く者もいるのではないでしょうか。本書の著者、井田良教授は、言わずと知れた理論刑法学の第一人者の1人です。そのような著者が死刑存廃論に目を向けたということは、実に不思議でした。しかし、それは本書を読んですぐに腑に落ちるものでした。つまり、本書は、“刑罰論”の見地から死刑を論じた書であり、刑罰論はいうまでもなく理論刑法学です。まごうことなき理論刑法学の見地から、死刑存廃論を捉え直したのが本書なのです。 エレイン・ショーウォーター編 ; 青山誠子訳『新フェミニズム批評 : 女性・文学・理論』岩波書店 1990年フェミニズム文学研究の旗手エレイン・ショーウォーターによるフェミニズム批評論のアンソロジーです。翻訳は、我が国における英文学研究の第一人者にして、フェミニズム文学研究の先駆者として知られる青山誠子氏(青山学院大学名誉教授)によるものです。フェミニズム批評は、社会に隠蔽された不当な女性蔑視を暴き出します。それは、民族やジェンダー、セクシャリティなどに関わるマイノリティ解放運動の一翼を担い、ポスト構造主義をはじめとする革命的な批評理論と横断的に影響を与え合いながら、発展してきました。フェミニズム批評における革新的な論文を収集した本書では、その黎明期から今後の可能性に至るまでの実態が明らかになります。その際、題材となっているのは、文学作品です。古来より、文学は社会を映し出す鏡として認識され、哲学をはじめ、多様な学問の最良の研究題材となってきました。本書でも、文学作品に基づいた黒人フェミニズム批評等の先鋭的な論の数々が紹介されています。フェミニズム批評への上質な入門書としてだけではなく、様々な学問が文学作品を題材とすることの意義を知る良著として推薦します。 穗積陳重著『法窓夜話』有斐閣 1916年 ほか大学に限らず「授業」と呼ばれるもので問題となるものの一つとして教師による余談(授業内容とは無関係な話)があります。紹介者が大学で職を得て間もない頃、「専門科目の話ばかりでは学生さんらも退屈するだろうから余談でもしようか。ただ、教師の自慢話の類は質が悪いのはもちろん、すべらない話をする技量もない。」ということで、予め余談を仕込んで話をすることにしました。そこでネタ本としたのが本書です。 |