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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介2020 Vol.4伊藤靖史 [ほか] 著 『会社法』第4版 有斐閣 2018年 会社法は、会社に就職した後になると必要性が理解できるものの、学生時代には具体例が思い浮かばないため、難しい法分野に思われがちである。できれば多くの具体例をあげて、どのような問題があるのか、それに対して会社法はどのような解決策を提示しているのかが示されていれば理解しやすくなる。 知的財産研究教育財団編 『医療と特許 : 医薬特許発明の保護と国民の生命・健康維持のための制度的寄与』 創英社/三省堂書店 2017年コロナ禍の現在、有効で安全なワクチン及び治療薬が見いだされ、世界の人々に行き渡るのか、こうした緊急事態に必須の製品のイノベーションを促しつつそのアクセスを可能にする特許保護はどのようなものかという、いわゆる医薬品アクセス問題が世界的な関心を呼んでいます。本書では、故・竹田稔弁護士(元東京高裁部総括判事)の発案による研究会に参加した研究者や弁護士、製薬産業関係者が、医薬関連発明が物質特許や製剤特許等でいかに保護されるかという特許適格性(いわゆる川上対応)、特許権取得後にその排他的権利を制限する種々の規定や強制・裁定実施権等(川下対応)の両面で制度改善を提言しています。日本については、医薬特許発明の特許適格性は狭すぎるという指摘に宛てた保護対象の拡大や、裁定実施権制度に代えて、政府による特許発明の利用の適切な制度化が指摘されます。国際的にも、国家が採る知的財産の効力の制限措置に関する検討・承認制度や、イノベーションに対する報酬と医薬品価格の切り離しを裏付ける実証研究、経済的社会的な要因を取り除く政府の措置を促す制度活用等が提言されています。とりわけ本書は、公共財としてのワクチンや治療薬の配分には言及しないものの、公共財とする上で、その生産と流通を左右する価格及び数量に知的財産がどう作用しているかを検討する必要があると認識させる力を有しています。 齊藤誠, 野田博編 『非常時対応の社会科学 : 法学と経済学の共同の試み』 有斐閣 2016年東日本大震災に対する直後の対応から今日に至るまでの政策などについて、科学や研究者はどのような評価をしてきたのであろうか。本書は、東日本大震災の検証を通じて、行政のガバナンスが欠如していたことや、非常時における紛争解決手段の未整備と情報基盤の欠如があったことを指摘したうえで、平時において非常時に向けての合意形成を進めるための方策と非常時における国家の財政の能力について考察するものである。従来から社会システムのあり方を法学と経済学から検討を加える手法は存在するが、戦後最悪の災害を目の当たりにして、建設的かつ真剣な議論が交わされた成果がここに現れている。 ピーター・シンガー著 ; 山内友三郎, 塚崎智監訳 『実践の倫理』 昭和堂 1999年近代において宣言された人権の理念(「人は生まれながらに自由で権利において平等で…」)は、すべての人間を等しく主体、目的とみなす限りにおいて、倫理、法などの実践を理論的に基礎づけるものです。この理念こそが、現実の隷属、不平等、差別、人権侵害などへの抵抗を可能にします。しかしながら、それは、自然を単なる客体、手段として扱う限りにおいて、人間中心主義に他なりません。動物保護、環境保全関連の法制度が整備されるようになったとはいえ、人格は人(自然人)にのみ認められています(法人は除くなら)。「知は力なり」とばかりに、人間は、他の生物種を管理あるいは搾取してもよいのでしょうか。現在の環境問題はこのような人間中心主義が引き起こしているのではないでしょうか… |