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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介2022 Vol.1P.F.ドラッカー著 ; 上田惇生訳『ネクスト・ソサエティ : 歴史が見たことのない未来がはじまる 』ダイヤモンド社 2002年 本書は,ドラッカーが,2002年に,雇用構造,少子高齢化,情報技術(IT)の浸透,斬新な起業家精神の勃興などの社会の変化と経済についての未来予想を鋭い視点から解説したものです。2022年4月,東京証券取引所が新しい市場区分に再編されることを考えた時,本書を思い出し,読み返してみました。学生の皆さんの誕生間もなく,あるいは誕生前に書かれたものです。 リンダ・ハッチオン[著] ; 川口喬一訳『ポストモダニズムの政治学』法政大学出版局 1991年ポストモダニズムとは,近代を超克することを目指して,20世紀に哲学・芸術・建築・批評などの分野で拡がった思想運動です。著者は,建築,文学,写真,映画,絵画など多岐にわたる事例を用い,政治的次元におけるその根源的二重性を明らかにします。実は,これら表象文化は,どんなに政治的言説を欠いているように見えても,社会的事象である時点で政治的構築物であることを免れることはできません。社会自体が意味体系のネットワークである以上,それは,政治的に形成されたものとしてしか存在しえないのです。一方で,政治に対して批判的距離を保つことは社会の健全性を維持するために不可欠ではありますが,残念ながら,あらゆる社会的事象はこの点に無自覚です。しかし,ポストモダニズムに限っては,批判的距離を措定しつつ,それを破壊する逆説的二重性を帯びていることが本書で例証されます。ポストモダニズムは,政治と分かちがたく結びついていることを戦略的に自認し,それを対象化することで,批判的距離を確保するのです。現代社会の価値体系と支配的イデオロギーを身近な事例を用いて問い直し,社会と政治の関りについて俯瞰的に見つめ直すに相応しい入門書として推薦します。 野田進, 松井茂記編『新・シネマで法学』有斐閣 2014年 「つまらない」法律学に学生の皆さんの興味を喚起することは,法学教育に携わる者にとっての重要で困難な課題の1つであるといえますが,本書は,この目的のためのものの1つといえるでしょう。本書では,著名な映画を題材として,法学に関する問題を考察されています。たしかに法律や司法制度を直接の題材とした映画は多くあり,その鑑賞により法的問題について多くの示唆を得られることはしばしばですが,一見法律問題と無関係の映画であっても,さまざまな社会問題を知り,考えるきっかけとなるものであり,たくさんの映画を鑑賞することは法律学を勉強するモチベーションとなるでしょう。比較的新しい社会問題,および映画も取り扱われており,多くの人の興味を引く内容が含まれています。通読しなくとも,各解説を読んだ後で,当該紹介された映画をいくつか鑑賞してもらえれば,本書を手に取った目的は十分に果たされると思います。 鴨志田祐美著『大崎事件と私 : アヤ子と祐美の40年』LABO 2021年推薦図書では本格的な専門書が多く紹介されている印象があるので,私からは一般人でも読むことができる一冊をあげることにします(もちろん刑事司法の学修にも役立ちます)。 |