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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介2019 Vol.1David A. Baldwin and Mark Haugaard (eds.)『Robert A. Dahl: An unended quest』Routledge, 2016.現代政治学においては,一度ならず何度でも,ダール(Robert A. Dahl)の名前を目にする。政治学のさまざまな研究成果をみると,いかにダールの影響が大きいものであるのかが理解できる。20世紀から21世紀にかけての政治学において,それほどまでにダールの果たした役割は大きなものであったし,いまだに政治学を学ぶ際には,避けて通ることのできない存在であることは確かである。本書は,2014年に亡くなった彼を追悼した書物であるが,現代米国の政治学を代表する著名な研究者たちによる追悼論文集というよりも,政治学の研究者として,教育者として,民主主義者としてという三つの側面から多角的にダールの政治学を論じた一冊の研究書として捉えることができる。ダールの主たる業績は,民主主義論や権力論であったが,何度も版も重ねた『現代政治分析(Modern Political Analysis)』のような政治学の教科書を著し,広い視野から政治学を論じたことも無視することはできない。本書は,これらの業績にも焦点を向けながら,ダールを回顧した一冊であり,現代政治学のある重要な部分に焦点を絞った研究書としても位置づけることができる。 福田歓一著『近代の政治思想:その現実的・理論的諸前提』岩波新書1970年ベストセラーにもなったユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」によれば,チンパンジーや他の旧人類とホモ・サピエンスを決定的に分けるのは,サピエンスが集団を一つにする虚構の物語を受け入れることができることだという。私たちが暮らす社会の法制度は,まさにそうした虚構の物語であって,こんにち憲法を頂点とするこの虚構の物語は立憲主義と呼ばれる。そして,この物語がどのような経緯で作り上げられたのかを丹念に解説するのが,本書である。 濱口桂一郎著『新しい労働社会』岩波新書 2009年昨年(2018年)に成立した,「働き方改革」法関連の,また外国人労働者の受け入れ拡大を目指した入管法改正関連のニュースに,どのくらい学生が関心を持って接していたのだろうか。 早房長治著『村山龍平:新聞紙は以て江湖の輿論を載するものなり』ミネルヴァ書房2018年中高生の頃に学校の図書室で読書を楽しんでいた人ほど,大学の図書館の利用方法に困惑することがあるという。小説の類がほとんど置いていないためだ。大学図書館は,調査・研究に資する図書を収集している専門図書館であり,法学部の場合は主に社会科学に関する学術書が並んでいる。そこで小欄では,授業課題や研究のためだけではなく,専門図書館の蔵書を単純に読書として楽しむ方法を紹介しておきたい。それは,評伝を物語として読むことである。法学部図書館に収蔵されている評伝は,もちろん専門家が執筆した学術書なのだが,そのなかで活写されている一人の人間の生涯は,小説に優るとも劣らない刺激的な内容に満ちている。法学部図書館にはミネルヴァ書房の日本評伝選シリーズだけでも30余りのタイトルが収められており,標記の『村山龍平』もその1つである。村山龍平(1850-1933)は朝日新聞社の社主・社長として活躍した人物であり,「公平中立」を旗幟として同紙における様々な紙面改革を主導した人物である。本書で紹介されている村山龍平の足跡から,日本における近代新聞の誕生と発展の歴史を考えることが可能である。一例として代表的な新聞人の評伝をあげたが,この他にも政治家や学者,文学者や思想家の評伝も数多く収蔵されているので,ぜひ一度OPACに「評伝」と打ち込んで検索してみてもらいたい。 |