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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介図書委員からの推薦図書 2018 Vol.3伊達聖伸著『ライシテから読む現代フランス:政治と宗教のいま』岩波書店 2018年「ライシテ」(laïcité)という語は,19世紀のフランスで生まれた。「政教分離」,「非宗教性(脱宗教性)」等の訳語が存在するが,その内容は多岐にわたる。日本におけるライシテ研究の第一人者伊達聖伸がこの語を日本語に訳さずに使用する理由は,そこにある。 藤原彰著『餓死(うえじに)した英霊たち』青木書店 2001年本書は,アジア・太平洋戦争における日本軍戦没者の過半数が,広義の餓死であったという衝撃的な事実の提示に始まる。第一章は,各地の戦場における日本軍の作戦行動の結末と戦死の実態を検討し,それが「名誉の戦死」などと言えるものではなく,「飢餓地獄の中での野垂れ死に」であったことを明らかにする。第二章では,大量の兵士の「餓死」は偶然や自然現象の産物ではなく,作戦の誤りに原因があること,すなわちエリート参謀たちの立てた作戦計画における補給軽視の姿勢や,作戦目的達成のためには他を犠牲にしても良いとする作戦第一主義により非人間的な命令が発せられたこと,などが原因として指摘された。そして第三章では,こうした非人間性を生み出す日本軍という組織の問題点として,精神主義への過信,上官への過度の服従強制と兵士の人権・生命の軽視,幹部教育の偏向,日本軍の捕虜禁止政策が生み出した「玉砕」の思想があぶり出されていく。 林紘一郎著『情報法のリーガル・マインド』勁草書房 2017年今日,法の領域として「情報法」が独立したものとして扱われているといっても異論はないであろう。一方,情報法の定義や概念については必ずしも確立したものがあるとはいえず,それ自体が議論の対象となっているともいえる。著者は,従来の法分野の枠組みのなかで「情報」をいかに位置づけようとし,また取り込もうとする指向では把握し解決しきれない問題があり,旧来の範疇に基づく情報や法の理解には限界があると指摘する。そのうえで,このような状況を「モヤモヤ」した感じと評し,思い切った発想の転換,すなわち従来の議論とは異なった情報法のとらえ方が必要であると説く。 橋爪大三郎著『正しい本の読み方』講談社 2017年大学に入ると,講義のなかでさまざまな本を薦められたことでしょう。あるいは大学での学びを通じて,今までは出会わなかった新たな分野の本にも多く出会うことになると思います。でも正直,読むべき本は多すぎてどこから手をつけたらいいのか迷うことはありませんか。もしかしたら,その多さを目にしただけで読む気が失せたという人や,最初から本が好きではないという人もいると思います。この本は,そんな「本の読み方」に迷う人たちに著者の独自の視点からアドバイスを提供しようとする本です。もちろん,この本にある「正しい読み方」が誰にとっても正しいのかは分かりません。それでも,どれから手を付けていいか分からない人にはその選択のための一案を,読みたい本なんか無いという人には取りあえず手に取ってみる1冊目の読み物を,この本は提供してくれます。そして,この本を通じてあなたなりの「本の読み方」を見つけることができるのではないでしょうか。 |