• 2024.04
  • 『差別する人の研究 : 変容する部落差別と現代のレイシズム』
  • 『触法精神障害者 : 医療観察法をめぐって』
  • 『ジェンダーで学ぶメディア論 = Media studies from gender perspective』
  • 『文系のための統計学入門 : データサイエンスの基礎』
  • 『哲学な日々 : 考えさせない時代に抗して』
  • 2024.01
  • 『政治はケンカだ! : 明石市長の12年』
  • 『一般条項の理論・実務・判例』
  • 『損害概念論序説』
  • 『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら : 15冊から読み解く家事労働と資本主義の過去・現在・未来』
  • 『国会を考える』
  • 2023.10
  • 『SNS別最新著作権入門 : 「これって違法!?」の心配が消えるITリテラシーを高める基礎知識』
  • 『「戦前」の正体 : 愛国と神話の日本近現代史』
  • 『選挙制を疑う』
  • 『近代日本の競馬 : 大衆娯楽への道』
  • 2023.07
  • 『イギリス思想家書簡集 : アダム・スミス』
  • 『日本国憲法の条件』
  • 『道徳感情論 : 人間がまず隣人の,次に自分自身の行為や特徴を,自然に判断する際の原動力を分析するための論考』
  • 『ニュルンベルク裁判 : ナチ・ドイツはどのように裁かれたのか』
  • 『モノたちの宇宙 : 思弁的実在論とは何か』
  • 2023.04
  • 『目の見えない人は世界をどう見ているのか』
  • 『死刑制度と刑罰理論 : 死刑はなぜ問題なのか』
  • 『新フェミニズム批評 : 女性・文学・理論』
  • 『法窓夜話』
  • 2023.02
  • 『地理的表示保護制度の生成と展開』
  • 『弱者に仕掛けた戦争 : アメリカ優生学運動の歴史』
  • 『事例でおさえる民法改正債権法』
  • 2022.12
  • 『デリバティブ・金融工学 / 金融と法 Ⅱ』
  • 『デジタルで変わる子どもたち : 学習・言語能力の現在と未来』
  • 『政策リサーチ入門 : 仮説検証による問題解決の技法』
  • 『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? : これからの経済と女性の話』
  • 2022.10
  • 『ホッブズリヴァイアサン』
  • 『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した : 潜入・最低賃金労働の現場』
  • 『模倣の法則』
  • 2022.07
  • 『アース・デモクラシー : 地球と生命の多様性に根ざした民主主義』
  • 『パブリッシング・スタディーズ』
  • 『それでも選挙に行く理由』
  • 『国際機構論講義』
  • 2022.03
  • 『ネクスト・ソサエティ : 歴史が見たことのない未来がはじまる 』
  • 『ポストモダニズムの政治学』
  • 『新・シネマで法学』
  • 『大崎事件と私 : アヤ子と祐美の40年』

TOP推薦図書紹介

推薦図書紹介

2018 Vol.5

松本和彦著『事例問題から考える憲法』有斐閣2018年

本書は「事例問題から考える」という書名からもわかるように,具体的な事案の解明を通じて憲法問題を考える演習書である。憲法に関する演習書は数多く存在するが,本書はそのなかでも議論のわかりやすさという点で群を抜いている。
演習書というと,どうしても事案の「解決」に目が行きがちであり,そのため「裁判所(裁判官)目線」で事案を眺めるスタイルが中心となる。もちろん,それはそれで勉強になるのだが,読み手からすると,学説・判例の紹介に始まり,何らかの「妥当(そう)な結論」が導き出されていくのを,戦いのリングの外から眺めているような気分になりやすい。
しかし,本書は,事案の分析から解決へといたるプロセスにおいて,徹底的に「当事者目線」に立つ。すなわち,実際に対立する当事者から見た場合に,その問題が憲法上のどのような利益や解釈と関係するのかが中心的なテーマなのである。このため読者は,本書において戦いのリングに放り込まれ,憲法論の応酬を当事者と同じ目線で疑似体験する。
全30問の事例は古典的なものから最先端の議論を誘発するものまで多様である。憲法を一通り学んだ学生諸君はもとより,いままさに学んでいる最中の学生諸君にも最適な演習書である。
(玉蟲 由樹教授/新着図書コーナー)

カロリン・エムケ著 浅井晶子訳『憎しみに抗って:不純なものへの賛歌』みすず書房2018年

本書が2016年にドイツ図書流通連盟平和賞を受賞した際,「政治的,宗教的,文化的な対立が頻繁に会話を不可能にしてしまう時代における社会行動の模範である。」と評された。移民問題で揺れるドイツでベストセラーになった本である。
ジャーナリストである著者カロリン・エムケがドイツやアメリカで起きた差別意識を源とする事件の分析を通じて,その背景にある「包括と排除」のメカニズムを解き明かしていく語り口は明晰である。本書の優れた点はそれだけにとどまらず,現代の世界中で抱える民族・宗教・ジェンダー・移民・差別問題の解決への足がかりとして,「憎しみと蔑視に対する批判と抵抗は」「憎むものを悪魔的な存在に仕立て上げて批判することではなく」「憎しみと蔑視の構造と条件へと向け」,そこから具体的な方策を提案している点である。それは政治・社会制度や法律との関わり方にまで及ぶ。
自分たちの「基準」にあてはまらない存在への嫌悪,その存在への攻撃を容認しても良いという暗黙の了解,このような憎しみのメカニズムに飲み込まれない為に本書から学ぶことは多い。
(真道 杉准教授/4F東開架)

エステル・デュフロ著 峯陽一,コザ・アリーン訳『貧困と闘う知 : 教育、医療、金融、ガバナンス』みすず書房2017年

本書は,低所得国が抱える教育・健康・金融・ガバナンス問題についての研究成果を,読みやすい形にまとめ上げた一冊となっている。本のタイトルを見ただけでは,この本が経済学者によって書かれたものであると推察するのは難しいかもしれない。
国家が市場に介入するのは,財の配分を行うにあたり,市場における価格調整機能を用いた配分では,公益の観点からの配分が難しい時となる。本書の第4章「ガバナンスと汚職」では,汚職を「公務員(または議員)が個人的な特権を得るために規則に違反する状況」と定義する。そして「腐敗した公務員たち」が行っているのは「法律に違反することで,国家が除去しようと試みた市場のロジックを再導入し,しばしば財の分配の方法を変化させようとする」ことであるとしている。ここで言う市場のロジックとは価格調整機能を用いた配分を指し,汚職では,賄賂,ゆすりとられる金や,みかじめ料が,財の配分において価格の役割を果たすものとなる。
社会に存在する問題には,政治の分野,経済の分野,そして法の分野として,切り離して考えることが難しい問題も多い。本書は,政治・経済・法を学んでいる人,ここ日本大学法学部で学んでいる人に,読むことを薦める一冊である。  
(横溝 えりか准教授/5F東開架)

中野重治著『中野重治詩集 : 中野重治自選』岩波書店1956年

二〇世紀の詩人,中野重治は教養主義を批判した。それは「大正」期以降,教養主義とは教養を持たない人々を二流以下の存在に位置づけ,「文化」的な「市民」にのみ権利を認める発想とみなされたのだ。中野らプロレタリア文学の担い手たちは,そのような卓越化への「否」を述べたのである。
今日もまた,企業や国家の立場から教養主義は批判されている。しかしその批判の意義は換骨奪胎され,完全に真逆のものとなってしまった。教養を持つ意味は,資本主義社会の中で無害な労働者を仕立て上げ,またリソースを最適化するために無化されるのである。
だが現代のこの事態は,中野の著作を読めば極めて偏ったものであることがわかる。中野において教養主義批判が,労働者の力を汲むための「別種の知」を求めることと固く結びついていた点は,決して忘れてはならない。そして私は学生たちにも,これからの自分たちにとって真に必要な「別種の知」とは何なのかを,「教養」や大学,図書館,そして自らの周囲から盗み取り,作り出して欲しいと願っている。
最後に中野の詩,「歌」の一節を掲げたい。
「たたかれることによって弾ねかえる歌を/恥辱の底から勇気を汲みくる歌を/それらの歌々を/咽喉をふくらまして厳しい韻律に歌いあげよ/それらの歌々を/行く行く人びとの胸郭にたたきこめ」
(宮澤 隆義専任講師/3F東開架)

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