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TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介図書委員からの推薦図書 2015 Vol.1古川元晴=船山泰範著 『福島原発,裁かれないでいいのか』 朝日新書2015年内閣法制局参事官や京都地検検事正などを歴任した古川弁護士と,日本大学法学部で,人間学としての立場からの刑法学を牽引し続けてこられた船山教授との知的コラボレーションによってなった本書である。周知のように福島原発事故をめぐって原発告訴団は,数次にわたって行政と東京電力の関係者を,業務上過失致死傷害罪などで告訴した。これに対して東京地検は「行政と東京電力の関係者には過失責任を認め難い」としてこれを不起訴処分にしたのである。本書では新書という形をとりながら,この法理をめぐって膨大かつ重大な論考がおさめられている。これまで日本で裁かれた大事故や,裁かれなかった大事故などの事例を検証しながら,同時に刑事法の学説にまで論及し,「福島事故は『人災』である」との立場を明確にする。その上で,検察審査会の起訴相当との見解を詳細に解説し,「市民」の側に立った人間学としての立場からの法解釈を提起する。「起きる可能性が合理的に予測される危険については,責任者は未然に発生を防止する義務がある。また,それは法律によって,保障されないといけないのだ」と説くお二人の共著者たちの心の奥底からの叫びが聞こえてくるような新書である。 山室信一=岡田暁生=小関隆=藤原辰史編 『第一次世界大戦』 全4巻 岩波書店2014年第一次世界大戦は,それまでの戦争形態を一変させ,国家のあらゆる人的・物的資源のみならず国民精神までも動員する「総力戦」となった。航空機,潜水艦,戦車,毒ガスといった新兵器が駆使され,通商破壊戦が海上で展開された。その結果,1300万人が命を落とし,4つの帝国が崩壊した。大戦への反省から設立された史上初の国際平和機構,国際連盟は,戦争違法化の端緒をひらいた。 Charles Webel and Johan Galtung著 『 Handbook of peace and conflict studies』 Routledge 2009年本書は,紛争/平和研究の第一人者ヨハン・ガルトゥング博士(Johan Galtung,1930年~)の研究成果を,ハンドブックの形式でまとめた一冊である。同氏は,既存のジャーナリズムが客観的な手法を原理原則としてきたために,いつのまにか‘我々と彼ら’(us and them)という2分法に陥ってしまい,ジャーナリズム本来の目的である問題解決に向けた力が発揮できなくなっていると分析する。 |