• 2022.01
  • 『マルコムX : 人権への闘い』
  • 『情報生産者になる』
  • 『ウィトゲンシュタイン、最初の一歩 = The first step with Wittgenstein』
  • 『なぜ7割のエントリーシートは、読まずに捨てられるのか? : 人気企業の「手口」を知れば、就活の悩みは9割なくなる』
  • 2021.12
  • 『ベンサム全集』
  • 『一問一答・平成28年刑事訴訟法等改正』
  • 『「私物化」される国公立大学(岩波ブックレット)』
  • 『法解釈の方法論:その諸相と展望』
  • 2021.10
  • 『アメリカ人が驚く日本法 』
  • 『図録知的財産法 』
  • 『社会的なものを組み直す : アクターネットワーク理論入門』
  • 『大人のための社会科 : 未来を語るために』
  • 2021.07
  • 『憲法思想研究回想 : メタユリストに見えたもの』
  • 『ラビン回想録』
  • 『市民論』
  • 『議会法』
  • 2021.04
  • 『企業法の進路 : 江頭憲治郎先生古稀記念』
  • 『イデオロギーとは何か』
  • 『自由はどこまで可能か : リバタリアニズム入門』
  • 2021.02
  • 『誰のために法は生まれた』
  • 『メディア・社会・世界 : デジタルメディアと社会理論』
  • 『反哲学入門』
  • 2020.12
  • 『The three musketeers (Macmillan readers; 2, beginner level)』
  • 『刑事法入門』
  • 『外来種は本当に悪者か? : 新しい野生』
  • 2020.10
  • 『会社法』
  • 『医療と特許 : 医薬特許発明の保護と国民の生命・健康維持のための制度的寄与』
  • 『非常時対応の社会科学 : 法学と経済学の共同の試み』
  • 『実践の倫理』
  • 2020.09
  • 『「政治資金」の研究 : 利益誘導の日本的政治風土』
  • 『法学部、ロースクール、司法研修所で学ぶ法律知識』
  • 『歴史から理論を創造する方法 : 社会科学と歴史学を統合する』
  • 2020.07
  • 『「族議員」の研究 : 自民党政権を牛耳る主役たち』
  • 『法のデザイン : 創造性とイノベーションは法によって加速する』
  • 『法学(補訂版)』
  • 『黒い司法 : 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』

TOP推薦図書紹介

推薦図書紹介

2023 Vol.2

篠原久, 只腰親和, 野原慎司訳『イギリス思想家書簡集 : アダム・スミス』名古屋大学出版会 2022年

2023年はアダム・スミス生誕300年記念の年となります。本書は2022年に公刊されたものですが,2023年を意識しての作業であったことは想像に難くありません。本書には本学経済学部が所蔵しているスミス書簡「ウォートン宛 X-d-48(会食辞退)」と「カデル宛 VII-2(『道徳感情論』新版に言及)」が収められています。
アダム・スミスといえば「経済学の祖」と称されますが,本書は,経済学者アダム・スミスよりも,哲学者,思想家としてのアダム・スミスへの実像理解に貢献するものとなっています。当時は,書簡が意思疎通,意見交換の手段であり,書簡は非常に大きな重要性を持っていました。本書の原典はいわゆるグラスゴー版の,The Correspondence of Adam Smith, ed. by E.C. Mossner and I.S. Ross, Oxford University Press, 1977です。訳本と原典を見比べてはどうでしょうか。
グラスゴー大学では,ADAM SMITH 300 YEAR ANNIVERSARY と題して各種の記念事業が行われています。こちらも関連ページを閲覧してください。       
(川又祐教授/新着図書コーナー  331.42||Sm 5)

小林昭三著『日本国憲法の条件』成文堂 1986年

昭和時代の一風変わった憲法の本です。「憲法のいわゆる体系書でも概説書でもない。むしろ,日本国憲法の,また日本国憲法をとおして近代憲法の問題点のいろいろを示そうとした本」(278頁)です。日本国憲法はその成立した時代の諸条件によって支えられていました。時代とともにその条件が変化し,憲法規定と現実のギャップを生み出しています。「日本国憲法の出生が特異であっただけに,憲法の規定についてそれの成立過程を見つめ,吟味することは,日本国憲法を〝知る〟うえでぜひなされるべきこと」(2頁)と著者は強調します。今更,そんなことはどうでもいいではないかとのつぶやきが聞こえてきそうです。勇ましい改憲論でも寛容さに欠ける護憲論でもありません。「世間の荒波にもまれて必死になっている憲法の姿を気にかけて,そのような憲法の生きざまを見,憲法の真実を探す姿勢」(276頁)で,時代に翻弄されるその姿を描いています。このような接近法による憲法の研究を,著者は「憲法政治学」と呼んでいます。一般の憲法解説書に慣れた目には違和感に満ちた本でしょう。しかし,その違和感の正体を考える読者には,これまで知らなかった憲法の本当の姿を見せてくれます。類書のない一冊です。
(東裕教授/ 4F西開架 323.4||Ko 12.1a)

アダム・スミス [著] ; 高哲男訳『道徳感情論 : 人間がまず隣人の,次に自分自身の行為や特徴を,自然に判断する際の原動力を分析するための論考』講談社 2013年

近年,AIの研究が盛んになっています。AIにはさまざまな種類があり,さまざまな応用が考えられます。そのうちのいくつかの特徴として,具体的なケースに関する判断を直観的に行っている,という点が挙げられます。例えば,将棋では従来,「居玉は避けよ」や「桂馬の高跳び歩の餌食」などの,格言が存在していました。これは,具体的なケースに関する判断ではなく,一般的にそういうことが成り立つ,という考え方です。ところが,将棋AIが発達してくると,これらの格言は実際には成り立っておらず,ケースバイケースで評価をしなければならない,ということが分かってきました。道徳の領域において,似たようなことを考えていたのが,アダム・スミスです。スミスは,正義以外の徳について,あらかじめ正確なルールを作ることはできないし,作る必要もない,と考えていました。そして,ケースバイケースに判断する主体として,公平な観察者という概念を持ち出します。公平な観察者は,十分な情報を与えられた状態で,特定の立場に与せずに道徳的な判断を下す,内心の声であるとされます。これは現代で言うAIのようなものなのでしょうか? みなさんはどう考えますか?
(出雲孝准教授/3F東開架 150||Sm 5c)

アンネッテ・ヴァインケ著 ; 板橋拓己訳『ニュルンベルク裁判 : ナチ・ドイツはどのように裁かれたのか』 中央公論新社 2015年

ロシアによるウクライナ侵攻の文脈で,国際刑事裁判所(ICC)という単語をニュース等で耳にした方も多いでしょう。本書はICCとも関連が深いニュルンベルク裁判について扱われたものです。法廷では,ホロコーストを始めナチスドイツによる戦争犯罪が明らかにされたのみならず,「平和に対する罪」など新しい罪の規定も見られ,これらは現在の国際法体系の一部を構成しています。本書ではまず,アメリカなど連合国内において,ドイツの主要戦争犯罪人の処罰にいかにして対応するかについての議論が整理されています。その中で目を引くのは,チャーチルがいわゆる「アウトロー」計画―ナチ指導部「無法者」であり「法の保護を剥奪された者たち」であるとし,訴訟手続きを不要として処罰する計画―を提唱したことです。このような計画は,アメリカの反対もあり,国際軍事法廷の創設へと転換していきました。
しかしながら,その創設と運営は容易なことでなく,当時の関係者の苦闘も読み取ることができます。それらを経て創設された裁判において,戦時国際法における国家と個人の二つの責任が初めて確立されるという歴史的意義を持つことになりました。本書は,国際法はもちろん,国際政治にも関心のある方にはぜひ読んでもらいたい1冊です。
(本吉祐樹専任講師/4F西開架 329.67||W 55)

スティーヴン・シャヴィロ著 ; 上野俊哉訳『モノたちの宇宙 : 思弁的実在論とは何か』 河出書房新社 2016年

アメリカの哲学史家・批評家である著者は,カントの相関主義に対する批判を共有する思弁的実在論(メイヤスー,ハーマンなど)を整理する一方で,この現代の潮流と比較しながらイギリスのホワイトヘッド(1861‐1947)の哲学を分かりやすく紹介しています。
人間主義は,人種差別,性差別など諸々の差別に対抗する理論的根拠を提供しますが,人間中心主義に留まる限りにおいて自然支配をもたらし,世界規模の喫緊の環境問題とも関係があるのではないでしょうか。西洋には主流派とも言うべきデカルト,カントなど広義の二元論的系譜があります。人間と非人間との区別(不連続性)を強調する立場です。キリスト教とも親和的です。それに対して連続性を強調する立場もあります。ポストデカルトの合理主義の系譜にありながら,ライプニッツは後者に位置づけることができます。その哲学によれば,無数の連続的なモナド(心的実体)は,単に人間だけではなく有機物,無機物をも,つまり世界をつくっています。それぞれのモナドをいわば世界からのそれへの生成に変容すると,ホワイトヘッドの個体化(プロセス)に近づけることになります。人間中心主義の理論的なオルタナティブが求められる現代において,ホワイトヘッド哲学は一層その真価を発揮するように思います。
(吉澤保准教授/3F東開架  133.5||Sh 13)

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