|
TOP推薦図書紹介 推薦図書紹介図書委員からの推薦図書 2011 Vol.4Jeffrey Jowell, Dawn Oliver編 『The Changing Constitution』 Oxford University Press 2011昨年の暑い夏,本書の7版が出た。本書の初版が出されたのが1985年。それから25年の間に7版を重ねた。本書がそれだけ多くの読者に読まれ,重要視されているかが分かるであろう。さらに本書の初版が出された1985年は,ダイシーの『憲法研究序説』が出版されてちょうど100年目に当たる年だった。それだけ強い思いが込められた本なのである。本書は3部からなり,第1部は,ダイシーが,その書で,イギリス憲法の双子の基本原理と称した「法の支配」と「議会主権」に,EUおよび人権条約という欧州からの津波が押し寄せ,変容が迫られている状況が描かれている。同時に,個人の権利より市場の競争原理に重きをおいた前保守党政権の中央集権的な政策を,個人の権利に重きを置く,ニュー・レイバー労働政権の推進した一連の“野心的”な憲法改革が描かれ,その過程で今話題の1998年人権法にも言及されている。また,第2部は,同憲法改革の一つとして実現された地方分権を,また,第3部は,同憲法改革のプロセスで制定された情報公開法を含む公行政に対する現代的規制にも触れられ,興味は尽きない。 (加藤紘捷教授/6F東開架) 遅塚忠躬著 『史学概論』 東京大学出版会 2010「歴史とは何か」。この問いへの答えを分かりやすく解説してくれる,ありがたい本が2010年に出た。 「言語論的転回」や「物語り論」などに連なる学説の洗礼を受けた今日の我々は,もはや,完全な過去の客観的事実など手に入らないと知っている。しかし,ややもすれば,歴史とは歴史家の解釈に基づいた「作り話」や「文学」に過ぎないと割り切る誘惑にもかられる。遅塚氏は,自身の研究生活で研ぎ澄まされた感覚に基づいて,歴史的事実の「柔らかな実在論」を信じる独自の立場を表明し,過去の世界の復元の可能性(限界)や歴史研究の社会的意義について丁寧に論証していく。 吉見俊哉著 『大学とは何か』21世紀も既に10年以上経過した。ここに来て,これまで所与のものとしてあった組織や考え方に,再検討や見直しが迫られていることはここで具体例をあげずとも最早明白なことであろう。 |