• 2012.02
  • Media Debates: Great Issues for the Digital Age
  • The Criminal Responsibility of Senior Political and Military Leaders as Principals to International Crimes
  • 『ソーシャル・キャピタル入門―孤立から絆へ』
  • 『これからの「正義」の話をしようーいまを生き延びるための哲学』
  • 2011.10
  • The Changing Constitution
  • 『史学概論』
  • 『大学とは何か』
  • 2011.08
  • Debates on democratization
  • 『現代商取引法』
  • 『遺言と遺留分 第1巻 遺言 第2版』
  • 『人間・社会・法』
  • 2011.04
  • Europäisierung des Rechts, Herausgegeben von Herbert Roth
  • 『近代日本司法制度史』
  • 『要説:日本の財政・税制』
  • 『数学は言葉』
  • 2011.02
  • 『The Failure of Civil Society? The Third Sector and The State in Contemporary Japan』
  • 『マックス・ウェーバーの社会学 「経済と社会」から読み解く』
  • 『メディアと日本人』

TOP推薦図書紹介

推薦図書紹介

図書委員からの推薦図書 2011 Vol.4

Jeffrey Jowell, Dawn Oliver編 『The Changing Constitution』 Oxford University Press 2011

年の暑い夏,本書の7版が出た。本書の初版が出されたのが1985年。それから25年の間に7版を重ねた。本書がそれだけ多くの読者に読まれ,重要視されているかが分かるであろう。さらに本書の初版が出された1985年は,ダイシーの『憲法研究序説』が出版されてちょうど100年目に当たる年だった。それだけ強い思いが込められた本なのである。本書は3部からなり,第1部は,ダイシーが,その書で,イギリス憲法の双子の基本原理と称した「法の支配」と「議会主権」に,EUおよび人権条約という欧州からの津波が押し寄せ,変容が迫られている状況が描かれている。同時に,個人の権利より市場の競争原理に重きをおいた前保守党政権の中央集権的な政策を,個人の権利に重きを置く,ニュー・レイバー労働政権の推進した一連の“野心的”な憲法改革が描かれ,その過程で今話題の1998年人権法にも言及されている。また,第2部は,同憲法改革の一つとして実現された地方分権を,また,第3部は,同憲法改革のプロセスで制定された情報公開法を含む公行政に対する現代的規制にも触れられ,興味は尽きない。

(加藤紘捷教授/6F東開架)

遅塚忠躬著 『史学概論』  東京大学出版会 2010

「歴史とは何か」。この問いへの答えを分かりやすく解説してくれる,ありがたい本が2010年に出た。 
著者は,2010年亡くなられた,わが国を代表するフランス革命史研究者・遅塚忠躬氏である。歴史研究の現場で多種多様な膨大な史料を分析してきた,歴史学者の活き活きした「声」が本書を貫いており,それが本書の大きな魅力となっている。

「言語論的転回」や「物語り論」などに連なる学説の洗礼を受けた今日の我々は,もはや,完全な過去の客観的事実など手に入らないと知っている。しかし,ややもすれば,歴史とは歴史家の解釈に基づいた「作り話」や「文学」に過ぎないと割り切る誘惑にもかられる。遅塚氏は,自身の研究生活で研ぎ澄まされた感覚に基づいて,歴史的事実の「柔らかな実在論」を信じる独自の立場を表明し,過去の世界の復元の可能性(限界)や歴史研究の社会的意義について丁寧に論証していく。 
本書は,とても読みやすい。なぜなら,遅塚氏の東京大学文学部在職中の講義ノートが本書の母胎だからである。それ故,学部生レベルの入門者であったとしても,興味を失わずに難解な議論についていける。また,欧米だけでなく戦後日本での歴史研究の手法や理論の流行とその移り変わりも分かる。これも本書の魅力であろう。 
(馬渕彰准教授/3F西開架)

吉見俊哉著 『大学とは何か』

21世紀も既に10年以上経過した。ここに来て,これまで所与のものとしてあった組織や考え方に,再検討や見直しが迫られていることはここで具体例をあげずとも最早明白なことであろう。 
当然「大学」なる組織もその例外ではない。本書は,大学が一体何であるかを,中世ヨーロッパの歴史的淵源まで遡り,大学が歴史的に果たしてきた役割を分析した。日本では,19世紀にそれが輸入され,次第に天皇のまなざしを受けつつ,帝国を背景にした展開をするようになる。戦後になり大学が大衆化するにつれ,大学が抱える歴史的かつ本質的問題が「学生叛乱」という形をとり噴出した。これをうけ,80年代以降の改革が行われ,今後の大学への展望を唱えて本書は閉じられる。 
ネット社会を迎えて,「知」なる分野も様々な運命的改変を迫られてきた。本書はそのような社会的変化に敏感に反応し,新たなる「知」の獲得を模索している。その中でもやはり大学は必要であり,大学も社会全体の動きに即応し,そして大学自身が自己改変を進めていかなければ,時代の流れに応じきれないこと。そして大学に関わる者たちは,その流れを敏感に感じ取り,そして歴史を踏まえた中で,次なる大学像を模索する必要性のあることを筆者は唱えていると考えられる。 
大学の現在と過去を知り,未来を展望する上で是非とも一読をお薦めしたい。 
(黒滝真理子教授/5F東開架)

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