推薦図書

『人口減少社会の未来学』

  • 著者名 : 内田樹編,池田清彦[ほか]著
  • 出版社 : 文藝春秋
  • 出版年 : 2018年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2019 Vol.3
少子高齢化が喫緊の課題であると言われて久しい。この間,政府や自治体がこの問題に対する施策を検討してきたにもかかわらず,問題自体が根本的に解決されることはなく現在に至っている。人口減少による労働力不足や社会保障制度の持続可能性に加え,近年ではAIによる雇用の喪失といった問題が複合的に絡み合い,いたずらに未来に対する不安が助長されている感もある。こうした中,本書は「前代未聞の事態」であるこの問題について,多角的に検討を加える者である。生物学者,コラムニスト,劇作家といった様々な肩書きを持つ論者から,人口減少社会における社会の変容とそれに対する対策が示される。全11の論考はいずれもコンパクトでありながら密度の濃いものであるが,本書において具体的な結論が明確に示されているわけではなく,問題の捉え方自体も各論者によって異なっているため,すっきりとしない読後感が残るかもしれない。もっとも,本書の狙いは,過度に悲観的あるいは楽観的になり問題から目を背けるのではなく,活発な想像力と推理力を用いて考えることの大切さを伝える点にある。これからの時代を生きる学生の皆さんに是非読んでもらいたい1冊である。
(加藤 雅之教授/5F東開架)