推薦図書

『あたらしい憲法のはなし』復刻版

  • 著者名 : 文部省 編
  • 出版社 : 東京出版
  • 出版年 : 1995年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2019 Vol.3
『あたらしい憲法のはなし』は別にもう一冊ある。宮沢俊義『あたらしい憲法のはなし』(復刻版,三陸書房・2016年)だ。文部省の『はなし』は,昭和22(1947)年8月に新制中学1年の社会科教科書として刊行された。宮沢の『はなし』は,それより早く同年3月に朝日新聞社から刊行されている。いずれも前年11月3日に公布された日本国憲法の内容を平易に解説したもの。文部省編『はなし』は,現行憲法成立当時の公定解釈ともいえ,憲法の原意を知ることができる。宮沢俊義の『はなし』も同様だが,戦後憲法学の基礎を築いたとされる著者の新旧憲法の移行期における微妙な態度の揺れが窺え,興味深い。いま,あらためて当時の憲法解釈に示された理想を再確認してみたい。はたしてその理想がそもそも達成可能なものと考えられていたのか。GHQの草案作成にまったく触れていないのはなぜか,等々。今日に続く憲法解釈の主流の源を訪ね,その流れが波静かな四海に至るものか展望してみてはどうだろうか。
なお,この他に高見勝利編『あたらしい憲法のはなし』(岩波現代文庫・2013年)(*本館未所蔵)があり,これには「新憲法の解説」(内閣発行・昭和21年)と「新しい憲法 明るい生活」(憲法普及会編・昭和22年)が収められている。
(東 裕教授/4F西開架)