推薦図書

『戊辰戦争の新視点』上[世界・政治]下[軍事・民衆]

  • 著者名 : 奈倉哲三・保谷徹・箱石大[編]
  • 出版社 : 吉川弘文館
  • 出版年 : 2018年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2019 Vol.2
本書は戊辰戦争の「新視点」という書名が示すように,これまでの研究では十分に解明されていなかった,この内戦が政治・社会・人間・思想に及ぼした影響を具体的に解明することを目的として,当時の国際関係と国内政治,軍隊と戦術,戦費の調達,民衆の戦争への関与,新政府の宗教政策などの課題に取り組んだものである。
上巻,下巻ともに9編の論考が収められている。上巻は「Ⅰ.世界史のなかの戊辰戦争」と「Ⅱ.戦争と政治」で構成され,「国際法のなかの戊辰戦争」,「フランス・ジャーナリズムと戊辰戦争」,「静寛院・天璋院の行動と江戸城大奥の消滅」,「戊辰戦争下のキリスト教政策」などがある。下巻は「Ⅰ.戦争と軍隊」と「Ⅱ.戦争と民衆」からなり,「戊辰戦争期における陸軍の軍備と戦法」,「戊辰戦争の戦費と三井」,「『上野のお山』をめぐる官軍と江戸市民の攻防」,「徴発と兵火のなかの北東北の民」など,こちらも興味深い論考が並ぶ。
一次史料を駆使して新たな事実と知見を提供する本書は,これまでの戊辰戦争研究で目が届かなかった分野に光を当てている。歴史好きの学生に薦めたい一書である。
(喜多 義人教授/3F西開架)