推薦図書
『分解するイギリス:民主主義モデルの漂流』
- 著者名 : 近藤康史 著
- 出版社 : 筑摩書房
- 出版年 : 2017年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2018 Vol.4
近年の日本において,民主主義のモデルとして捉えられてきたイギリスのイメージは一変した。EU離脱を問う国民投票の結果,既存の二大政党による政党政治は危機的状況に陥った。しかし,著者は,イギリス政党政治の変質が国民投票以前から生じていたと論じている。
同書では,イギリスの政党政治に関して,議会主権,小選挙区制,二大政党制,政党の一体性,執政優位の執政―議会関係,単一国家といった要素が徐々に「分解」してきたことを示している。例えば,議会主権はEUによって掘り崩されてきたし,二大政党制は多党制との間で揺らいでいる。政党の一体性に関しても,保守党と労働党の両党で党内対立が生じている。単一国家という点も,スコットランド独立問題に代表されるように変化が見られる。一方で,小選挙区制は,いまも維持されているし,執政―議会関係では集権制が高まった。しかしながら,著者は,これらの制度的パーツの変形によって,トータルとしてイギリス民主主義が変容したと指摘している。
同書の価値は,大きく分けて2点ある。1つ目は,イギリス政党政治の変容を実証している点である。2つ目は,比較政治学で学ぶ基本的概念が整理されていることである。イギリス政治に興味のある学生はもちろんのこと,政治学全般に対する理解を深めたい学生にとっても必読の書となるだろう。
(三澤 真明専任講師/4F東開架)
同書では,イギリスの政党政治に関して,議会主権,小選挙区制,二大政党制,政党の一体性,執政優位の執政―議会関係,単一国家といった要素が徐々に「分解」してきたことを示している。例えば,議会主権はEUによって掘り崩されてきたし,二大政党制は多党制との間で揺らいでいる。政党の一体性に関しても,保守党と労働党の両党で党内対立が生じている。単一国家という点も,スコットランド独立問題に代表されるように変化が見られる。一方で,小選挙区制は,いまも維持されているし,執政―議会関係では集権制が高まった。しかしながら,著者は,これらの制度的パーツの変形によって,トータルとしてイギリス民主主義が変容したと指摘している。
同書の価値は,大きく分けて2点ある。1つ目は,イギリス政党政治の変容を実証している点である。2つ目は,比較政治学で学ぶ基本的概念が整理されていることである。イギリス政治に興味のある学生はもちろんのこと,政治学全般に対する理解を深めたい学生にとっても必読の書となるだろう。
(三澤 真明専任講師/4F東開架)