推薦図書

『実践国際法(第2版)』

  • 著者名 : 小松一郎 著
  • 出版社 : 信山社
  • 出版年 : 2015年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2018 Vol.2
本書は,本文505頁の大著であるが,国際法の体系書ではない。著者の小松一郎氏は外交官で,本省勤務の大半を国際法局(旧条約局)で過ごした。国際法に関する論文も多い。国際法局長や駐仏大使を歴任したあと,集団的自衛権の行使容認に積極的であったことから2013年8月,安倍晋三首相の意向で内閣法制局長官に起用された。しかし,翌年5月,体調不良により退任し,その約1カ月後に逝去した。本書の第1版は2011年,小松氏が駐仏大使在任中に刊行された。死後,国際法局の後輩外交官たちが,事実関係の変化や新たな問題を加えて改訂したのが第2版である。
本書の特長は,外交実務面から国際法の機能を解説した点にある。小松氏によれば,自国の外交上の主張に説得力を持たせるためには国際法を「味方につけ」,上手に「使う」ことが重要であるという。そうした問題意識のもと,本書は国際法の基本的論点について,具体的な事例をあげて,わかりやすく書かれている。脚注が詳細であり,条約,国際判例,国家実行のほか,日本の国内法令や国会答弁にも解説が及んでいる。国際法や国際関係論を学ぶ学生諸君にはぜひお読みいただきたい。目次を見るだけでも興味をひかれるはずである。
(喜多 義人教授/4F西開架)