推薦図書

『立法過程』

  • 著者名 : 岩井奉信 著
  • 出版社 : 東京大学出版会
  • 出版年 : 1988年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2018 Vol.2
本書の初版の出版は1988年である。そう聞くと,ずいぶん古い本だな,という印象を受けるかもしれない。確かに,現在の日本政治に関する説明は本書には出てこない。しかし本書は,日本政治を研究する上で避けて通ることのできない「古典的名著」なのである。
今でこそ,議会政治に関する書物は数多く出版されるようになっているが,本書の出版以前は,日本の立法過程に関する実証的な研究はほとんどなかったといっても過言ではない。国会に対する評価が低く,日本の立法過程の分析に意味が見いだされていなかったからである。しかしそうした一般的な見方に対するアンチテーゼとして,本書は,焦点の当て方によっては国会も機能しているといえる側面があることを,具体的なデータを用いながら実証した。本書が示したこの知見がひとつの転機となり,その後日本の立法過程は盛んに研究されるようになる。戦後日本政治の原型ともいえる「55年体制」の下における国会の実態を知る上で欠くことのできない書物となっており,日本の政治に興味のある学生の皆さんにはぜひ一読をお勧めしたい。
なお,本書は既に絶版になっており,書店で入手することはできない。この機会に,ぜひ図書館に足を運んで本書を手に取ってみてほしい。
(水戸 克典教授/4F東開架)