推薦図書

『18歳から考える人権』

  • 著者名 : 宍戸常寿 編
  • 出版社 : 法律文化社
  • 出版年 : 2015年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2017 Vol.5
本当はダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』を紹介しようと思ったのだが,法学部図書館には収蔵がないようだ。そこで,本書を紹介することにした。なぜ?と思われるかもしれないが,つながりは後ほど。
本書は,初学者向けに書かれた憲法学の本である。憲法学は自分たちの生活とかけ離れた印象を持たれるため,「食わず嫌い」になりやすい。本書は,できるだけ具体的な事例から人権問題を考えるという発想で書かれた本である。例えば「自分の髪型を自分で決めてはいけないのですか?」(自己決定権)や「『お前らなんかいなくなれ』と叫んでもいいですか?」(ヘイト・スピーチ)など,素朴な問いかけから人権問題が語られている。身近な例から憲法学の議論へと進むための入り口として,初学者にもとっつきやすいだろう。もちろん,一度,憲法学に挫折した人にも,再入門にオススメである。
この中に「遺伝子研究で人の運命を変えることはできますか?」という章がある。ここでは『アルジャーノン』の話を下敷きにして,先端科学研究に対する規制の問題が論じられる。『アルジャーノン』を読んだことがある人もない人も,一読してもらえると嬉しい。ちなみにこの章の執筆者は私である。
(玉蟲 由樹教授/4F西開架)