推薦図書
『憲法第九条』
- 著者名 : 小林直樹 著
- 出版社 : 岩波書店(岩波新書)
- 出版年 : 1982年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2017 Vol.4
著者はかつて東大法学部で憲法を講じる護憲派の旗手だった。推薦者は高校二年の時に同じ著者の『憲法を読む』(1966年・岩波新書)を読んだ。東大教授が岩波新書で説く憲法論は,片田舎の高校生にとっては神の言葉の如きものだった。ただその言葉のそこかしこに得体の知れない違和感を感じてはいた。その後,大学院生の頃にこの『憲法第九条』が出た。手元にあるこの初版本には,万年筆であちこちに傍線が引かれている。
「第九条の理想を貫いて,積極的な平和戦略を展開することによって,日本はアジアの安定と自らの安全保障を武器なしに達成できるであろう」(16頁)。
「非武装を貫けば,どんなに悪くても,日本列島が軍事占領を受けるくらいが極限で,民族みな殺しや再起不能の大損害を蒙る最悪の事態は防げるはずである。のみならず,どんな占領軍がきても,一億を越える民族の忍耐づよい非暴力抵抗が続けられる国で,長期にわたる支配を行うことはできないであろう」(199頁)。
高校生の時に感じた違和感の正体がわかった。エリートでない身にはとうていついて行けない言説の数々なのだ。憲法九条の改正が議論される今日,戦争だけでなく「平和憲法」を守る怖さもわかる温故知新の一冊だ。
(東 裕 教授/3F東開架・4F西開架)
「第九条の理想を貫いて,積極的な平和戦略を展開することによって,日本はアジアの安定と自らの安全保障を武器なしに達成できるであろう」(16頁)。
「非武装を貫けば,どんなに悪くても,日本列島が軍事占領を受けるくらいが極限で,民族みな殺しや再起不能の大損害を蒙る最悪の事態は防げるはずである。のみならず,どんな占領軍がきても,一億を越える民族の忍耐づよい非暴力抵抗が続けられる国で,長期にわたる支配を行うことはできないであろう」(199頁)。
高校生の時に感じた違和感の正体がわかった。エリートでない身にはとうていついて行けない言説の数々なのだ。憲法九条の改正が議論される今日,戦争だけでなく「平和憲法」を守る怖さもわかる温故知新の一冊だ。
(東 裕 教授/3F東開架・4F西開架)