推薦図書
『消えたイングランド王国』(集英社新書)
- 著者名 : 桜井俊彰 著
- 出版社 : 集英社
- 出版年 : 2015年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2016 Vol.3
EU離脱を選択した現在 (2016年) のイギリスのことではない。これは,今からちょうど950年前 (1066年) に起きた出来事,即ちノルマン・コンクエストの物語である。このとき,イングランド王国は,ノルマンディ公ウィリアム (フランス名ギョーム) ・歴史上「征服王」と呼ばれるウィリアム1世率いるノルマン人たち,今日風に言えばフランス在住の人たちによって,まさに「食べられてしまった」のである。
因みにコリン・ジョイス著 (森田浩之訳)『驚きの英国史』によれば,当のイギリス人でさえ,この出来事をまともに説明できる人はほとんどいないらしい。にもかかわらずイギリスには,「イギリス史は『1066年とその他』から成り立っている」というジョークまであるという。そして『消えたイングランド王国』を読むと,日本では意外に知られていないけれども興味深いエピソードが紹介されている。湾岸戦争開戦時,国連安保理で参戦反対を表明したフランスのドビルパンに,当時のイギリス外相ストローが,何と次のように前置きして発言したというのだ。「私は,1066年にフランス人によって創立された『古い国』を代表し,意見を述べる」(同書,20頁) と。ストローの真意は何だったのか。
いずれにしても,イギリス (とりわけイングランド) はなぜEUと距離を置きたがるのだろうか。この問題を考えるうえで,本書も一つの手がかりとなるに違いない。
(渡辺 容一郎教授/3F西開架)
因みにコリン・ジョイス著 (森田浩之訳)『驚きの英国史』によれば,当のイギリス人でさえ,この出来事をまともに説明できる人はほとんどいないらしい。にもかかわらずイギリスには,「イギリス史は『1066年とその他』から成り立っている」というジョークまであるという。そして『消えたイングランド王国』を読むと,日本では意外に知られていないけれども興味深いエピソードが紹介されている。湾岸戦争開戦時,国連安保理で参戦反対を表明したフランスのドビルパンに,当時のイギリス外相ストローが,何と次のように前置きして発言したというのだ。「私は,1066年にフランス人によって創立された『古い国』を代表し,意見を述べる」(同書,20頁) と。ストローの真意は何だったのか。
いずれにしても,イギリス (とりわけイングランド) はなぜEUと距離を置きたがるのだろうか。この問題を考えるうえで,本書も一つの手がかりとなるに違いない。
(渡辺 容一郎教授/3F西開架)