推薦図書
『正木ひろし著作集 Ⅰ~Ⅵ』
- 著者名 : 家永三郎ほか編
- 出版社 : 三省堂
- 出版年 : 1983年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2016 Vol.3
正木ひろしは明治29年に生まれ,数多くの著名な事件に関わった反骨在野の弁護士である。
この著作集には,戦前に個人雑誌として発刊した『近きより』に掲載された社会評論から弁護人となった事件などを通して刑事裁判の本質を追究する論攷まで,警察や検察そして裁判所という権力と闘い続けた弁護士の生涯が収まっている。
しかし断っておかなければならいが,真実を解明しようとする法律家であり社会の共感や支持を得るような活動をした正木ひろしという人物を知ってもらうために薦めるのではなく,面白いから是非読んでもらいたいということである。まず『首なし事件』は,病死と処理されたことに疑問を抱いた正木が,法医学の専門家に首があれば死因を判定することができると言われたために,すでに埋葬されている遺体から密かに首を切断して持ち帰ることから名づけられた事件で,正木の豪胆な行動によって真実は発現した。『八海事件』は,強盗殺人罪で死刑判決を受けた被告人の冤罪を晴らすもので,被告人のアリバイを証明していく手法や過程などは推理小説に勝る筆致で著されている(「真昼の暗黒」として映画化もされた。)さて,『丸正事件』は,刑法Ⅰで学ぶ判例にもなっているので,ちょっと勉強して下さい。
正木の文章は古いスタイルで,少し読み辛いかもしれない。でも独特のリズムがあって,講談や落語に通じるものを感じる。法律の専門家でない多くの人々にも読まれたのはそんなところに理由があるのではないか。深刻な内容の本は深刻に読まなければならない,とは限らない。
(岡西 賢治准教授/4F東開架)
この著作集には,戦前に個人雑誌として発刊した『近きより』に掲載された社会評論から弁護人となった事件などを通して刑事裁判の本質を追究する論攷まで,警察や検察そして裁判所という権力と闘い続けた弁護士の生涯が収まっている。
しかし断っておかなければならいが,真実を解明しようとする法律家であり社会の共感や支持を得るような活動をした正木ひろしという人物を知ってもらうために薦めるのではなく,面白いから是非読んでもらいたいということである。まず『首なし事件』は,病死と処理されたことに疑問を抱いた正木が,法医学の専門家に首があれば死因を判定することができると言われたために,すでに埋葬されている遺体から密かに首を切断して持ち帰ることから名づけられた事件で,正木の豪胆な行動によって真実は発現した。『八海事件』は,強盗殺人罪で死刑判決を受けた被告人の冤罪を晴らすもので,被告人のアリバイを証明していく手法や過程などは推理小説に勝る筆致で著されている(「真昼の暗黒」として映画化もされた。)さて,『丸正事件』は,刑法Ⅰで学ぶ判例にもなっているので,ちょっと勉強して下さい。
正木の文章は古いスタイルで,少し読み辛いかもしれない。でも独特のリズムがあって,講談や落語に通じるものを感じる。法律の専門家でない多くの人々にも読まれたのはそんなところに理由があるのではないか。深刻な内容の本は深刻に読まなければならない,とは限らない。
(岡西 賢治准教授/4F東開架)