推薦図書
“Handbook of peace and conflict studies”
- 著者名 : Charles Webel and Johan Galtung著
- 出版社 : Routledge
- 出版年 : 2009年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2015 Vol.1
本書は,紛争/平和研究の第一人者ヨハン・ガルトゥング博士(Johan Galtung,1930年~)の研究成果を,ハンドブックの形式でまとめた一冊である。同氏は,既存のジャーナリズムが客観的な手法を原理原則としてきたために,いつのまにか‘我々と彼ら’(us and them)という2分法に陥ってしまい,ジャーナリズム本来の目的である問題解決に向けた力が発揮できなくなっていると分析する。
この問題の解決のために,紛争地における暴力行為にニュース価値の主軸を置く昨今の戦争報道(war journalism)から,ピース・ジャーナリズムへの転換を提唱する。すなわち,暴力に至る以前の経済的政治的文化的暴力や人権侵害,あるいは,紛争解決に尽力する人びとの行為の方に,より大きなニュース価値を置くべき,という提唱である。ここには,問題に直面している当事者を‘我々と同じ人間’(people like us)と捉え,ともに問題解決に向かう姿勢をジャーナリズムに持たせたいとの狙いがある。その背景には,カントの世界市民や世界正義の概念,1948年の世界人権宣言における‘すべての人間’といった考え方がある。長期化・激化する紛争地の最先端にいる現場記者たちからの共感を得て,欧州で特に再評価されている。行き詰っている日本の報道界の根幹を見直すヒントにも富む一冊である。
[別府三奈子教授/5F西開架]
この問題の解決のために,紛争地における暴力行為にニュース価値の主軸を置く昨今の戦争報道(war journalism)から,ピース・ジャーナリズムへの転換を提唱する。すなわち,暴力に至る以前の経済的政治的文化的暴力や人権侵害,あるいは,紛争解決に尽力する人びとの行為の方に,より大きなニュース価値を置くべき,という提唱である。ここには,問題に直面している当事者を‘我々と同じ人間’(people like us)と捉え,ともに問題解決に向かう姿勢をジャーナリズムに持たせたいとの狙いがある。その背景には,カントの世界市民や世界正義の概念,1948年の世界人権宣言における‘すべての人間’といった考え方がある。長期化・激化する紛争地の最先端にいる現場記者たちからの共感を得て,欧州で特に再評価されている。行き詰っている日本の報道界の根幹を見直すヒントにも富む一冊である。
[別府三奈子教授/5F西開架]