推薦図書

『スターリンのジェノサイド』

  • 著者名 : ノーマン・M・ネイマーク著 根岸隆夫訳
  • 出版社 : みすず書房
  • 出版年 : 2011年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2013 Vol.1
ジェノサイド(genocide)とは,1948年の「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」によると,「国民的,民族的,人種的または宗教的な集団の全部または一部を集団それ自体として破壊する意図をもって行われる」行為をいう。本書は,ソ連崩壊後に公開された公文書をもとに,スターリンが1930年代初期から行った自国民の処刑,強制移住などがジェノサイドにあたるかを検証する。 スターリンは富農の処刑と極寒地への強制移住,ウクライナ農民から穀物を強制徴発したことによる大飢饉,国境地域の敵性民族の逮捕・処刑,強制移住,政敵の粛清などに中心的役割を果たした。その結果,1953年までに110~120万人が処刑され,600万人が強制移住させられ,300~500万人が餓死または農業集団化や強制移住に反対して処刑された。本書は,こうしたスターリンの命令,許可,黙認による特定の社会集団・政治集団の計画的大量抹殺もジェノサイドに含めるべきだと主張する。 人は他者の死や苦しみにどこまで無関心になれるのか。一次資料と先行研究を駆使して書かれた本書は,全体主義の恐怖をあぶり出している。学生諸君の一読をすすめたい。 
(喜多義人准教授/3F西開架)