推薦図書

“The Criminal Responsibility of Senior Political and Military Leaders as Principals to International Crimes”

  • 著者名 : Héctor Olásolo 著
  • 出版社 : Oxford:Hart
  • 出版年 : 2010年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2012 Vol.1
国際法の主体は伝統的に国家であり,個人が国際法により処罰されることはなかった。しかし,第二次世界大戦後,戦争犯罪をはじめとする重大な国際法違反を行なった個人を国際法によって処罰する動きが生じた。そして,とくに2003年に常設の国際刑事裁判所が開設されたことにより,国際法の重大な違反行為に対して個人責任を追及する国際刑事法が国際法の重要なテーマとなるに至った。  本書は,このように発展した国際刑事法における,国際法違反行為を命令した政治および軍事の指導者の責任の追及について論じている。たとえば,戦争において非軍事目標を攻撃する命令を指導者が下したとしても,その命令を実行するのは軍人であり,責任を問われるのも当該軍人であることが多い。また,指導者の責任が問われたとしても,その被害と比較すると軽微な刑罰が科されるにとどまる可能性が高い。著者は,このような状況について,国内法から発生した「犯罪の支配(control of crime)」や「犯罪共同体(joint criminal enterprise)」という概念が国際刑事法において取り入れられ,政治および軍事の指導者を訴追する重要な法的根拠になってきていると主張する。 本書は,近年大きく発展した国際刑事法について学ぶうえで必要不可欠な一冊である。
(喜多義人准教授/6F西開架)