推薦図書

『人間・社会・法』

  • 著者名 : 星野英一 著
  • 出版社 : 創文社
  • 出版年 : 2009年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2011 Vol.3
民法の第一人者の一人である星野英一による『人間・社会・法』(創文社)を紹介したい。この本は,主に法律の初学者向けに書かれたもので,法律の基礎的な考え方や社会における役割,各種法律の内容・目的,さらに社会の転換に伴いどのように法が変化したかなどが非常に平明に解説されている。そのため,特に法律の勉強を始めたばかりの一年生には,法律を学ぶ意義を知ることができるだけでなく,現在「法学」等の講義で学習中の法のシステムがきれいに整理されて理解ができるようになると思われる。 それだけでなく著者は,「法学」などの講義ではあまり学ぶことのないと思われる事柄にまで言及する。例えば日本人の「法律嫌い」について触れた箇所では,「法」と「法律」を区別すべきとしたうえで,「法」は法律よりも広い意味での社会規範で,法律や慣習などの規範につき,それを批判したり,それを根拠づけ,基礎づける原理であり,「法律」は正当な立法権・立法機関が制定した規範であると定義づけ,ルール・規範を比較的よく守る日本人は「法律嫌い」であっても,決して「法嫌い」ではないと指摘する。このように法律の基礎的科目を終えた二年生以上の学生にも有用な記述も多く,是非一読されることを薦めたい書籍である。
(中村進教授/4F東開架)