推薦図書
『主婦である私がマルクスの「資本論」を読んだら : 15冊から読み解く家事労働と資本主義の過去・現在・未来』
- 著者名 : チョン・アウン著 ; 生田美保訳
- 出版社 : DU BOOKS
- 出版年 : 2023年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2023 Vol.4
本書は,共働き世帯の急増やそれに伴う少子化など,日本と同様の社会問題を抱える隣国,韓国を舞台として,「主婦」が,「古典」とされる著作を読み解きながら,自身を取り巻く資本主義社会について理解していくというストーリーになっています。本書で紹介される15冊の「古典」のなかには,書名にあるマルクスに限らず,社会科学において重要な著作も含まれています。 本書において主題となるのは,「主婦」と呼ばれる人たちは,家でさまざまな労働(家事労働)をこなしているにもかかわらず,なぜ,「家で遊んでいる」と言われてしまうのか,そして,そのような言葉が発せられるに至った社会的・文化的背景を掘り下げることにあります。筆者は,それを明らかにすることは,当事者である主婦や母親たちだけでなく,父親たち,母親ではない主婦たち,母親でも主婦でもない非婚女性たちにとっても必要なことだと言います。韓国のみならず日本の社会においても,家事労働を軽視する風潮があった過去は否定できません。あらゆる人が生きていくにあたり家事労働は不可欠であるにも関わらず,なぜそれを一手に引き受ける主婦が「遊んでいる」と言われなければならないのでしょう。筆者の言う通り,これは,「私たち全員」が考えるべき問題なのです。学生の皆さんにも,本書を手にとって,自分なりの視点でこの問題について考えてほしいです。
(生垣琴絵専任講師/5F東開架 367.1||C 53)
(生垣琴絵専任講師/5F東開架 367.1||C 53)