推薦図書
『道徳感情論 : 人間がまず隣人の,次に自分自身の行為や特徴を,自然に判断する際の原動力を分析するための論考』
- 著者名 : アダム・スミス 著 ; 高哲男 訳
- 出版社 : 講談社
- 出版年 : 2013年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2023 Vol.2
近年,AIの研究が盛んになっています。AIにはさまざまな種類があり,さまざまな応用が考えられます。そのうちのいくつかの特徴として,具体的なケースに関する判断を直観的に行っている,という点が挙げられます。例えば,将棋では従来,「居玉は避けよ」や「桂馬の高跳び歩の餌食」などの,格言が存在していました。これは,具体的なケースに関する判断ではなく,一般的にそういうことが成り立つ,という考え方です。ところが,将棋AIが発達してくると,これらの格言は実際には成り立っておらず,ケースバイケースで評価をしなければならない,ということが分かってきました。道徳の領域において,似たようなことを考えていたのが,アダム・スミスです。スミスは,正義以外の徳について,あらかじめ正確なルールを作ることはできないし,作る必要もない,と考えていました。そして,ケースバイケースに判断する主体として,公平な観察者という概念を持ち出します。公平な観察者は,十分な情報を与えられた状態で,特定の立場に与せずに道徳的な判断を下す,内心の声であるとされます。これは現代で言うAIのようなものなのでしょうか? みなさんはどう考えますか?
(出雲孝准教授/3F東開架 150||Sm 5c)
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