推薦図書
『ニュルンベルク裁判 : ナチ・ドイツはどのように裁かれたのか』
- 著者名 : アンネッテ・ヴァインケ著 ; 板橋拓己訳
- 出版社 : 中央公論新社
- 出版年 : 2015年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2023 Vol.2
ロシアによるウクライナ侵攻の文脈で,国際刑事裁判所(ICC)という単語をニュース等で耳にした方も多いでしょう。本書はICCとも関連が深いニュルンベルク裁判について扱われたものです。法廷では,ホロコーストを始めナチスドイツによる戦争犯罪が明らかにされたのみならず,「平和に対する罪」など新しい罪の規定も見られ,これらは現在の国際法体系の一部を構成しています。本書ではまず,アメリカなど連合国内において,ドイツの主要戦争犯罪人の処罰にいかにして対応するかについての議論が整理されています。その中で目を引くのは,チャーチルがいわゆる「アウトロー」計画―ナチ指導部「無法者」であり「法の保護を剥奪された者たち」であるとし,訴訟手続きを不要として処罰する計画―を提唱したことです。このような計画は,アメリカの反対もあり,国際軍事法廷の創設へと転換していきました。
しかしながら,その創設と運営は容易なことでなく,当時の関係者の苦闘も読み取ることができます。それらを経て創設された裁判において,戦時国際法における国家と個人の二つの責任が初めて確立されるという歴史的意義を持つことになりました。本書は,国際法はもちろん,国際政治にも関心のある方にはぜひ読んでもらいたい1冊です。
(本吉祐樹専任講師/4F西開架 329.67||W 55)
しかしながら,その創設と運営は容易なことでなく,当時の関係者の苦闘も読み取ることができます。それらを経て創設された裁判において,戦時国際法における国家と個人の二つの責任が初めて確立されるという歴史的意義を持つことになりました。本書は,国際法はもちろん,国際政治にも関心のある方にはぜひ読んでもらいたい1冊です。
(本吉祐樹専任講師/4F西開架 329.67||W 55)