推薦図書

『モノたちの宇宙 : 思弁的実在論とは何か』

  • 著者名 : スティーヴン・シャヴィロ著 ; 上野俊哉訳
  • 出版社 : 河出書房新社
  • 出版年 : 2016年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2023 Vol.2
アメリカの哲学史家・批評家である著者は,カントの相関主義に対する批判を共有する思弁的実在論(メイヤスー,ハーマンなど)を整理する一方で,この現代の潮流と比較しながらイギリスのホワイトヘッド(1861‐1947)の哲学を分かりやすく紹介しています。
人間主義は,人種差別,性差別など諸々の差別に対抗する理論的根拠を提供しますが,人間中心主義に留まる限りにおいて自然支配をもたらし,世界規模の喫緊の環境問題とも関係があるのではないでしょうか。西洋には主流派とも言うべきデカルト,カントなど広義の二元論的系譜があります。人間と非人間との区別(不連続性)を強調する立場です。キリスト教とも親和的です。それに対して連続性を強調する立場もあります。ポストデカルトの合理主義の系譜にありながら,ライプニッツは後者に位置づけることができます。その哲学によれば,無数の連続的なモナド(心的実体)は,単に人間だけではなく有機物,無機物をも,つまり世界をつくっています。それぞれのモナドをいわば世界からのそれへの生成に変容すると,ホワイトヘッドの個体化(プロセス)に近づけることになります。人間中心主義の理論的なオルタナティブが求められる現代において,ホワイトヘッド哲学は一層その真価を発揮するように思います。
(吉澤保准教授/3F東開架  133.5||Sh 13)