推薦図書

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

  • 著者名 : 伊藤亜紗 著
  • 出版社 : 光文社
  • 出版年 : 2015年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2023 Vol.1
「フツウの人」基準の法。当然なようだけど,「フツウの人」とは?多数派はフツウ?多数決が数の多寡を示すだけで,多数が正しい訳ではないように,マジョリティが正しく,マイノリティが間違っているわけではないでしょう。では法は?法はマジョリティ規範の当然視に胡坐をかいていないでしょうか?
「目の見えない人」は社会のマイノリティです。しかし「目の見えない人」を「可哀そう」で「労わってあげる対象」,もしくは「聴覚・触覚が発達したすごい人」と単にみなすのは,晴眼者規範に従った思い上がりで,「目の見えない」存在を見損なっているのでは?
社会には沢山のフツウがあることを,この本は気付かせてくれます。空間,感覚,運動,言葉,ユーモアを通じて展開される,見えない世界の躍動感といったらありません。単なる情報ではなく具体的文脈に埋め込まれた意味を共有し,ノイズを次の動きのきっかけにする…そんなとき,法はどんな形になり得るか,考えさせてくれる一冊です。
関連して,ヨシタケシンスケの絵本『みえるとかみえないとか』アリス館,川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』集英社インターナショナル(2022年本屋大賞ノンフィクション本大賞,2022年秋映画公開)もお勧め。この2冊は法学部図書館にないから,購入申請を出してね!
(松島雪江教授/5F東開架  369.275||I 89)