推薦図書
『アマゾンの倉庫で絶望し,ウーバーの車で発狂した : 潜入・最低賃金労働の現場』
- 著者名 : ジェームズ・ブラッドワース著 ; 濱野大道訳
- 出版社 : 光文社
- 出版年 : 2019年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2022 Vol.3
現代は,ICTや様々なテクノロジーの発達によって産業構造が変化し,それに伴い就業形態も大きく変動している時代です。
本書は,イギリス人ジャーナリストがイギリス内のアマゾンの倉庫で働くなどした潜入ルポです。筆者がルポ目的で従事した仕事は,アマゾン倉庫でのピッカー,訪問介護,コールセンター,ウーバーの運転者です。これらは不安定,過酷,低収入などの要素がそれぞれの働き方に内在していて,ある意味「取り残された層」(レフト・ビハインド)とも言えます。本書は,仕事の実態や同僚たちの証言を紹介しながら,それに止まらずイギリスの労働運動や労働組合の歴史や現状,移民問題など現代の課題にも言及します。そのためイギリス社会における「取り残された層」の位置づけがより鮮明になっていきます。
筆者は「何をしなければいけないのかを指図したり,なぜいま行動しなければならないのかを感傷的に訴えたりする気など毛頭な」く,「特定の問題に注目を集め」「共通の認識を変える」ことを目指したとしています。ある産業の勃興は別産業の衰退の呼び水となることが多いのです。本書が取り残された層に光を当てることで,私たちはその実情を知ることができ,実は同様の就業状況がイギリスだけではなく日本でもほぼ同時進行で拡大していることに気づかされます。
(大山盛義教授/5F東開架 366.44||B 58)
本書は,イギリス人ジャーナリストがイギリス内のアマゾンの倉庫で働くなどした潜入ルポです。筆者がルポ目的で従事した仕事は,アマゾン倉庫でのピッカー,訪問介護,コールセンター,ウーバーの運転者です。これらは不安定,過酷,低収入などの要素がそれぞれの働き方に内在していて,ある意味「取り残された層」(レフト・ビハインド)とも言えます。本書は,仕事の実態や同僚たちの証言を紹介しながら,それに止まらずイギリスの労働運動や労働組合の歴史や現状,移民問題など現代の課題にも言及します。そのためイギリス社会における「取り残された層」の位置づけがより鮮明になっていきます。
筆者は「何をしなければいけないのかを指図したり,なぜいま行動しなければならないのかを感傷的に訴えたりする気など毛頭な」く,「特定の問題に注目を集め」「共通の認識を変える」ことを目指したとしています。ある産業の勃興は別産業の衰退の呼び水となることが多いのです。本書が取り残された層に光を当てることで,私たちはその実情を知ることができ,実は同様の就業状況がイギリスだけではなく日本でもほぼ同時進行で拡大していることに気づかされます。
(大山盛義教授/5F東開架 366.44||B 58)