推薦図書

『大崎事件と私 : アヤ子と祐美の40年』

  • 著者名 : 鴨志田祐美 著
  • 出版社 : LABO
  • 出版年 : 2021年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2022 Vol.1
推薦図書では本格的な専門書が多く紹介されている印象があるので,私からは一般人でも読むことができる一冊をあげることにします(もちろん刑事司法の学修にも役立ちます)。
本書は,再審無罪を勝ち取るために,人生を捧げているといっても過言ではない弁護士の活動記録です(現在「大崎事件」は第4次再審請求中。事件の詳細は本書で)。検察や裁判所に対して舌鋒鋭く批判がなされているものの,聞くところによれば,裁判所関係者をはじめ,法曹関係者の間で本書は話題になっているとのことです。それは本書が,単に検察が悪い,裁判所が悪いというレベルを超えて,過去の弁護人を含め,法曹三者全てが犯した過ちを是正することが正義にかなうという,未来に向けた思考が前提になっているというのもあるように感じます。もちろん,本書は,弁護人の立場から書かれたものであって一方当事者の言い分であり,反感を抱く読者もいるかもしれません。しかし,まずは手に取ってみてください。賛否はともかく,考えさせられる,読むに値する一冊です。
また,著者の独特の言葉遣い,造語力にも注目してみてください。俗っぽい表現から,最近耳にする「再審格差」という著者発案の用語まで,センスが感じられます。
(南由介教授/4F西開架 326.23||Ka 41)