推薦図書

『法解釈の方法論:その諸相と展望』

  • 著者名 : 山本敬三, 中川丈久 編
  • 出版社 : 有斐閣
  • 出版年 : 2021年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2021 Vol.4
法律学における解釈論上の争いは,各々の価値判断に左右される「水かけ論」「見解の相違」に過ぎないのではないか。法律学がどのような学問(であるべき)なのかよくわからない。そんな想いに至った学生さんに本書を薦めたいと思います。
法学部における法律の学習では,実定法解釈論が中心とされます。規定の抽象性あるいは欠缺ゆえに,法解釈により,紛争解決のルールを「創造」する必要に迫られますが,その際,裁判例や学説が多岐に分かれることも少なくなく,起草者の見解や母法,体系的整合性などがそれぞれの論拠として援用されていると思います。そこで,冒頭のような疑問を抱くに至るのです。
こうした法解釈学への疑問は,学生たちだけのものではありません。民法研究者を中心とした法学研究者の間でも激しく議論されてきました。「法解釈論争」とも呼ばれます。本書では,法分野ごとに,これまでの議論(法解釈の方法論)を辿りながら,当該分野での法解釈の特色・課題が論じられています。法解釈が価値判断に基づくものであるとしたとき,その優劣をどのように決すればよいのか。法律上の議論において「根拠を示す」とは,何を意味するのか。本書を読み,説得的な法解釈のあり方をともに考えていきましょう。
(野中貴弘准教授/1F新着図書コーナー 321||Y 31.11)