推薦図書

『ラビン回想録』

  • 著者名 : イツハク・ラビン著 ; 竹田純子訳
  • 出版社 : ミルトス
  • 出版年 : 1996年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2021 Vol.2
「血も涙も,もう充分に流しました。もう充分です」(本書470頁)。この言葉は,1993年に,イスラエルとパレスチナ解放機構の間で交わされた,オスロ合意の調印式に伴って行われたラビン首相の演説の一節である。オスロ合意によって,イスラエルとパレスチナに平和が訪れるかに思われたが,最近の報道でも取り上げられている通り,イスラエルとパレスチナの争いは継続している。本書が投げかけるのは,人々が争うのは止められないのだろうかという問いである。大学生のときに,本書を手に取った私が感じたことは,政治は対立を乗り越えられるという希望である。しかし,同時に,「政治」の困難さを実感させられた一冊である。この場で,多くを語ることは避けたい。なぜ,イスラエルとパレスチナが対立してきたのか。なぜ,今もイスラエルとパレスチナは軍事的な衝突を繰り返しているのか。幾多の疑問が浮かんでくるだろう。本書は,あくまでもイスラエルの首相を務めたラビンの見方である。政治家の回想録は,往々にして自己弁護の色彩を帯びていることに注意しなければいけないが,地域紛争を通して,「政治」とは何かを考えさせる興味深い著書である。
(三澤 真明准教授/3F西開架)