推薦図書
『憲法思想研究回想 : メタユリストに見えたもの』
- 著者名 : 菅野喜八郎, 小針司 対談
- 出版社 : 信山社
- 出版年 : 2003年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2021 Vol.2
本書は憲法学者の師弟対談である。主役の菅野教授は憲法学の基礎理論研究の第一人者的存在であった。筆者は大学院生の頃,同教授の『国権の限界問題』を読みかけたが,その緻密な論理を追うのに息切れして挫折した。再び菅野教授の研究を参照する必要に迫られて巡り逢ったのがこの一冊。「私のささやかな研究実績の要点の解説」(あとがき)とは言うものの,難解な諸理論の核心を突き,それを平易に解きあかし,読者の目から鱗を削ぎ落としてくれる好著である。一例を紹介しよう(235頁)。
[小針]「戦後憲法学の根底をなすのは自然法論ではないですか。そういう発想に立って今の憲法は出来ているから,それを守っていくのは「護教」と呼んで相応しいのではないですか。」
[菅野]それが一番はっきりしているのが芦部さんの立場です。彼は日本国憲法を絶対的道徳化しようとしたと思います。」
戦後憲法学の主流派の本質を抉る一言である。この指摘に向き合える憲法学徒はどれほどいるだろうか。東北大学定年退職後,本学法学部教授として勤務し(1988年~1998年),「日大への感謝を論文執筆で果たそうとした」と日法時代を回想する。その人柄が偲ばれる。
(東 裕教授/4F西開架)
[小針]「戦後憲法学の根底をなすのは自然法論ではないですか。そういう発想に立って今の憲法は出来ているから,それを守っていくのは「護教」と呼んで相応しいのではないですか。」
[菅野]それが一番はっきりしているのが芦部さんの立場です。彼は日本国憲法を絶対的道徳化しようとしたと思います。」
戦後憲法学の主流派の本質を抉る一言である。この指摘に向き合える憲法学徒はどれほどいるだろうか。東北大学定年退職後,本学法学部教授として勤務し(1988年~1998年),「日大への感謝を論文執筆で果たそうとした」と日法時代を回想する。その人柄が偲ばれる。
(東 裕教授/4F西開架)