推薦図書

『「族議員」の研究 : 自民党政権を牛耳る主役たち』

  • 著者名 : 猪口孝, 岩井奉信 著
  • 出版社 : 日本経済新聞社
  • 出版年 : 1987年
  • ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2020 Vol.2
長い間,日本の政治は霞が関の官僚に牛耳られているとの評価が一般的であった。実際,戦後の日本政治においては,政治家は政策知識に富む官僚の「代弁者」として発言し,行動することも少なくなかった。こうした状況は気圧配置になぞらえ「政(=官僚)高・党(=政治家)低」などと揶揄されることもあるほど,政策形成過程における官僚の優位性は多くの国民の認めるところであり,これが日本政治に対する一般的な見方となっていた。
しかし,こうした評価のアンチテーゼとして登場してきたのが,いわゆる「族議員」の存在である。自民党政権が長期にわたり継続し,また与党審査が厳格に行われる中で,著者の猪口,岩井は,従来見落とされていた,政策形成のプロセスのなかで影響力を行使する政治家の姿に着眼した。印象論で語られがちであった日本政治の実態を,データに基いて明らかにした点で本書の意義は大きい。戦後の日本政治を理解する上で欠くことのできない好著であり,日本政治を学ぼうとする学生にとっては必読の書であるといえる。
なお,本書は既に絶版となっており,書店で購入することは困難である。図書館では,こうした絶版本も容易に手に取ることができるので,ぜひ春の間に法学部図書館に足を運んでみてほしい。
(水戸 克典教授/4F東開架)