推薦図書
『黒い司法 : 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』
- 著者名 : ブライアン・スティーヴンソン著 ; 宮崎真紀訳
- 出版社 : 亜紀書房
- 出版年 : 2016年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2020 Vol.2
2019年に製作された映画「黒い司法 0%からの奇跡(原題「Just Mercy」)」の原作であり,アメリカの人権弁護士である著者自身が著したノンフィクションである。本書における紹介によれば,著者は,アラバマ州モンゴメリーを拠点とする「司法の公正構想(イコール・ジャスティス・イニシアチブ)」の事務局長であり,また,何十人という死刑囚の救済措置を勝ち取り,連邦最高裁判所では5度弁論を行なっている。このような著者が,黒人に対するいくつかの冤罪事件と闘う過程を詳細に振り返っている。人種差別の現状とともに,アメリカの刑事司法制度の詳細がよく理解できる。著者が取り組むのは,人種差別そのものはもちろんであるが,アメリカの大量投獄と極刑問題である。すなわち,極めて多くのアメリカ人が刑務所に投獄されすぎており,また,犯罪の重大さに比して極めて重すぎる刑が科せられている現状である。わが国における犯罪に対する不寛容という傾向について(この傾向の存否も問題ではあるが),考えるきっかけになると思う。
(吉田 純平准教授/3F西開架)
(吉田 純平准教授/3F西開架)