推薦図書
『法学の誕生 : 近代日本にとって「法」とは何であったか』
- 著者名 : 内田貴 著
- 出版社 : 筑摩書房
- 出版年 : 2018年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2020 Vol.1
日本は,幕末に西洋列強と締結した不平等条約の改正のために,西洋法体系の導入が不可欠であった。西洋的な法律の制定自体は外国人法律家に起草を依頼することで足りるが,それらの法律を運用し,実際の裁判で適用する専門家を養成するためには,西洋の法律が作られた背景を深く理解するとともに,日本の実情にも詳しい者による教育が必要であった。その教育を担うのが「法学」である。明治国家は,その任を穂積陳重・八束の兄弟に委ねた。
本書は,その陳重・八束の兄弟の奮迅の働きを比較的冷静な視点で記す。とはいえ,単なる伝記ではない。陳重が持ち帰った当時の西洋法学の動向を丁寧に解説するとともに,そうした西洋法学の視座から見た日本の伝統的風習に対する陳重の研究も詳細に紹介する。
西洋の法に対する理解を,文化背景の異なる日本に移植する困難さは想像を 絶する。いまや日常的に用いる「権利」という言葉に,「自分が何の拘束を受けることなく自由にふるまう法的な根拠となるモノ」という意味を,「right, droit, recht」から抽出して埋め込む作業を先人たちがなした結果,我々はこの言葉を苦もなく自分の主張のために活用することができるのだ。こうした先人たちの苦闘の上に,我々の勉強や研究が成り立っていることが,本書を通して理解できるだろう。明治期の近代化,西洋化の隠れた歴史を味わってほしい。
(髙畑 英一郎教授/4F東開架)
本書は,その陳重・八束の兄弟の奮迅の働きを比較的冷静な視点で記す。とはいえ,単なる伝記ではない。陳重が持ち帰った当時の西洋法学の動向を丁寧に解説するとともに,そうした西洋法学の視座から見た日本の伝統的風習に対する陳重の研究も詳細に紹介する。
西洋の法に対する理解を,文化背景の異なる日本に移植する困難さは想像を 絶する。いまや日常的に用いる「権利」という言葉に,「自分が何の拘束を受けることなく自由にふるまう法的な根拠となるモノ」という意味を,「right, droit, recht」から抽出して埋め込む作業を先人たちがなした結果,我々はこの言葉を苦もなく自分の主張のために活用することができるのだ。こうした先人たちの苦闘の上に,我々の勉強や研究が成り立っていることが,本書を通して理解できるだろう。明治期の近代化,西洋化の隠れた歴史を味わってほしい。
(髙畑 英一郎教授/4F東開架)