推薦図書
『絶望する勇気 : グローバル資本主義・原理主義・ポピュリズム』
- 著者名 : スラヴォイ・ジジェク著 ; 中山徹, 鈴木英明訳
- 出版社 : 青土社
- 出版年 : 2018年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2020 Vol.1
原題は「The Courage of Hopelessness」。直訳すれば「希望なきことの勇気」とでもなるだろうか。スラヴォイ・ジジェクはポピュラー・カルチャーと哲学,そして精神分析と政治を合わせ縦横無尽に論じ,加えてその特異なキャラクターから「哲学界のエルヴィス・プレスリー」と呼ばれることもある思想家だ。しかし,哲学が政治的出来事にヴィヴィッドに反応することが消失している現在,あくまでも左翼を標榜しつつブレグジットからトランプ,原理主義からMeToo運動まで語る彼の姿勢は貴重である。
ジジェクが主張するのは「絶望する勇気」,すなわち安易に「希望」を示す改善策や解決法に飛びつかず,物事をラディカルに考察する勇気の必要性だ。彼によると,トランプを生んだのは「リベラル―資本主義の伝統」そのものである。そこからの断絶を図ると同時に「ヨーロッパの解放論的遺産の核」を救おうとするジジェクの態度は,ヨーロッパ中心主義として批判されるものかもしれない。しかしその「普遍主義的な政治学」から何が汲み取れるのか,その再検討と実践を促すことにおいて刺激に満ちた一冊である。
(宮澤隆義准教授/3F東開架)
ジジェクが主張するのは「絶望する勇気」,すなわち安易に「希望」を示す改善策や解決法に飛びつかず,物事をラディカルに考察する勇気の必要性だ。彼によると,トランプを生んだのは「リベラル―資本主義の伝統」そのものである。そこからの断絶を図ると同時に「ヨーロッパの解放論的遺産の核」を救おうとするジジェクの態度は,ヨーロッパ中心主義として批判されるものかもしれない。しかしその「普遍主義的な政治学」から何が汲み取れるのか,その再検討と実践を促すことにおいて刺激に満ちた一冊である。
(宮澤隆義准教授/3F東開架)