推薦図書
『流言のメディア史』
- 著者名 : 佐藤卓己 著
- 出版社 : 岩波新書
- 出版年 : 2019年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2019 Vol.5
SNSが普及した今日,根拠を欠いた情報や恣意的にゆがめられた情報が多く見られるようになった。「フェイク・ニュース」が飛び交い,受け手の集団極性化が問題となっているなかで,私たちはいかにして情報と向き合うべきなのか。
トロント学派のメディア研究者であるマーシャル・マクルーハンは,共著『メディアはマッサージである』(原著1967年=邦訳1968年/1995年)のなかで,「われわれはバックミラーを通して現代を見ている。われわれは未来に向かって,後ろ向きで進んでいく」のだと表現している。新しい事象を判断する際に,既存の捉え方に執着することは問題もあるだろう。しかし,私たちは未来に起こることは誰も知り得ないが,過去に起きてきたことは知ることができる。そのため,現代社会に起きていることや,これから起ころうとしていることを理解するための手段として,過去の教訓を活かそうとすることは人間の取り得る極めて合理的な方法である。
本書『流言のメディア史』は,新聞やラジオといったオールド・メディアが主流であった時代の様々な事例(例えば,関東大震災における朝鮮人虐殺など)を通して,「メディア流言」について考察を加えている。幅広く過去の事例を取り上げた本書の知見は,今日のメディア環境における問題を捉えなおす道標となるものである。学科を問わず,広く法学部の学生に読んでもらいたい。
(石川徳幸准教授/5F東開架)
トロント学派のメディア研究者であるマーシャル・マクルーハンは,共著『メディアはマッサージである』(原著1967年=邦訳1968年/1995年)のなかで,「われわれはバックミラーを通して現代を見ている。われわれは未来に向かって,後ろ向きで進んでいく」のだと表現している。新しい事象を判断する際に,既存の捉え方に執着することは問題もあるだろう。しかし,私たちは未来に起こることは誰も知り得ないが,過去に起きてきたことは知ることができる。そのため,現代社会に起きていることや,これから起ころうとしていることを理解するための手段として,過去の教訓を活かそうとすることは人間の取り得る極めて合理的な方法である。
本書『流言のメディア史』は,新聞やラジオといったオールド・メディアが主流であった時代の様々な事例(例えば,関東大震災における朝鮮人虐殺など)を通して,「メディア流言」について考察を加えている。幅広く過去の事例を取り上げた本書の知見は,今日のメディア環境における問題を捉えなおす道標となるものである。学科を問わず,広く法学部の学生に読んでもらいたい。
(石川徳幸准教授/5F東開架)