推薦図書
『ネパールの女性グループによるマイクロファイナンスの活動実態:ソーシャル・キャピタルと社会開発』
- 著者名 : 青木千賀子著
- 出版社 : 日本評論社
- 出版年 : 2015年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2015 Vol.2
世の中には理不尽なことが多い。一生懸命に地道に頑張っている人々の命を奪う自然災害はその最たるものであろう。2015年4月25日に起きたネパール大地震もその一つであろう。しかも,5月5日付の英紙ガーディアンによれば,大地震で被災した若い女性たちが人身売買のターゲットになっているという。とてもにわかには信じられない話だが,このニュースに接して本書を思い出した。自然災害どころか,社会の仕組みのなかに理不尽が埋め込まれている国がいまだにあるという話だ。
本書は,ネパールにおけるカースト制度の最底辺におかれた不可触賤民のダリットの女性,とくにそのなかでも売春を生業としていた階層の女性グループへの綿密な聞き取り調査により,ダリットが置かれている不条理とさえいえる現状を活写したものである。ネパールの現状の記述は,あまりの理不尽さに言葉もないが,不条理を単に嘆くだけではなく,マイクロファイナンス活動とその結果うまれるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を通じて,人間として基本的な権利や機会が保障されていない「人間貧困」からの脱却策を模索したもので,社会的意義と志の高い著作である。
また,専門書としても,マイクロファイナンスがもつ女性へのエンパワーメント効果の検証,マイクロファイナンス活動とソーシャル・キャピタルの間の相互作用とそれがネパール社会へもつ効果の分析など興味深い視点を提供している。平和で安全な,そして豊かな日本では夢想だにできない現状を扱ったもので,日本の若者にも是非一読してもらいたい一冊である。
[稲葉陽二教授/所蔵予定]
本書は,ネパールにおけるカースト制度の最底辺におかれた不可触賤民のダリットの女性,とくにそのなかでも売春を生業としていた階層の女性グループへの綿密な聞き取り調査により,ダリットが置かれている不条理とさえいえる現状を活写したものである。ネパールの現状の記述は,あまりの理不尽さに言葉もないが,不条理を単に嘆くだけではなく,マイクロファイナンス活動とその結果うまれるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を通じて,人間として基本的な権利や機会が保障されていない「人間貧困」からの脱却策を模索したもので,社会的意義と志の高い著作である。
また,専門書としても,マイクロファイナンスがもつ女性へのエンパワーメント効果の検証,マイクロファイナンス活動とソーシャル・キャピタルの間の相互作用とそれがネパール社会へもつ効果の分析など興味深い視点を提供している。平和で安全な,そして豊かな日本では夢想だにできない現状を扱ったもので,日本の若者にも是非一読してもらいたい一冊である。
[稲葉陽二教授/所蔵予定]