推薦図書
『教養としての冤罪論』
- 著者名 : 森 炎 著
- 出版社 : 岩波書店
- 出版年 : 2014年
- ライブラリ−・ニュース掲載号 : 2015 Vol.2
冤罪事件は今も後を絶たない。にもかかわらず,冤罪は過去の制度で起きたこと,つまり警察の横暴な取調べや糾問主義な裁判が行われていた時代の名残ととらえがちであることも否定できない。これまでの書物の多くは,冤罪を生む構造が制度の歪にあることを指摘し,また国家権力への批判に重点を置くものであった。これに対して本書は,新たな視点で冤罪を論じるところに特色があり,そこが眼目になっている。著者は言う。「冤罪を日常的感覚で知ることを可能にする,そのための試みである」。つまり,刑事裁判においては常に冤罪が生じるリスクがあることを知り,一般の市民が「冤罪感覚」を持つことこそが重要であるとする本書の立場は,従来の冤罪論とは違う問題意識で著されたものと言ってよいだろう。また,このような見方は裁判員裁判においてより大きな意義を持つことになる。
著者は裁判官の経験をふまえて,過去の冤罪事件を類型化したものを「理念型」として掲げ,具体的な事実に即しつつ冤罪が生まれる過程を分りやすく説いている。紹介される事件の中には著名なものも多くあり,そのとき市民は様々な印象や感覚を持ったに違いない。そして本書を読むことで,同じ事件に対して持つ感覚は違うものになるはずである。
[岡西賢治准教授/4F西開架]
著者は裁判官の経験をふまえて,過去の冤罪事件を類型化したものを「理念型」として掲げ,具体的な事実に即しつつ冤罪が生まれる過程を分りやすく説いている。紹介される事件の中には著名なものも多くあり,そのとき市民は様々な印象や感覚を持ったに違いない。そして本書を読むことで,同じ事件に対して持つ感覚は違うものになるはずである。
[岡西賢治准教授/4F西開架]